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[ サスペンス ]
ルーズ戦記 オールドボーイ(劇画)
作画:嶺岸信明
土屋ガロン 出版月: 不明 平均: 7.00点 書評数: 1件

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No.1 7点 斎藤警部 2022/04/18 22:02
<<遠くまで来てしまった・・・ はたして わたしはこの”物語”を書くのだろうか・・・!?>>

..「人を殺して安眠できる奴は少ねえだろ」.. 私刑禁固のニーズに応える裏ビジネス「私設刑務所」にTV付き軟禁された男が、10年後に突如、大金と上等な服装付きで釈放される。毎日出前が運ばれる中華料理の栄養バランスと、欠かさず続けた筋力鍛錬の賜物で、逞しい健康体のまま刑期を終えた裏町紳士風の彼は、腕試しに乗ってみた若いチンピラ共との喧嘩で自信を付け、自分に10年間も不自由を押し付けた「敵」を捜し出し、きっちり落とし前を付けるべく、行動を開始する。 やがて出来た行きつけの呑み屋の若い女給といい仲になった彼を、遠くから見つめる一人の男がいた。。 いっやーー、あらすじ書けるのはここまで。   「よろしい、最高の結論だ」  

ヴァイオレンスに走り過ぎず、ディープな心理戦に置いた軸足をずらさないサスペンスフルな展開。 推理推測と行動のサイクルを重ねながら、今と過去とのナイスなカットバック。 昔の親友とも再開を果たす。やっぱな、親友との再会は、新宿だよな。。。。店の名前は「ムーンドッグ」。たまらんわあ。  「初めてだよ、そこから人間が現れたのは!?」   まだまだこれからの時に熱い名シーン「手術」。 灼熱の「ワンポイント」をあっさり言い捨てる彼。 競馬場にて純粋物理トリック炸裂(ご愛敬)! そして、これほど滑稽で切実な「食べ歩き」があるか。。 「ある視点」とはいったい何だ。。

<<この決断しだいで”物語”は一気にクライマックスに・・・・>>

その ”二度目の” 出逢いのシーン。。。。有名なギムレットがどうしたのアレを思い出した。 おっと、物語のど真ん中チョイ前でそう来るってが! 人生のメタファーのつもりか!..   「あの洞察力はおそらく『病理的』なものでありましょう」   .. 途中参戦の、まさかの位置付けの人物が沁みる。。。。 ま、まさかのどキーパーソンが、そこで浮上!!   「だからこのような不毛な”ゲーム”は早急に終わらせるべきだ………と」

最後に明かされる「殺さず10年軟禁の理由」は、その方向性はなんとなく風の中に見え隠れするようなものの、やはり意外性の彫りの深いものです。 一見、「は!? そんな事で10年も!?」と感じるかも知れませんが、この心的、内的、思索的でありつつ、抽象でなく具体的な、大きな復讐の理由は、妙に穏やかに、心の中の砂丘にジーーーンと静かな嵐を起こす効果があります。 怨恨を買う契機となった、主人公の◯を◯◯◯◯ものが、復讐者の◯◯◯或る「◯」だった、というのも、何とも言えない、ちょっと甘美で爽やかな涼風を吹かせてくれます。 このへん、結末に抜本的改変を施した映画版x2とはエラい違いです(笑)。
ちょっと怖いエピローグも、この頼もしい主人公ならむしろ、これからは気を付けて行こう、と気を引き締める合図になるのではないかな、なんて明るい方向に私は解釈してしまいます。

難点を挙げれば、最終段階、「敵」と真っ向勝負に至る所だけちょっと忙しなく急いじゃったかな、というバランス微妙な感がある所。これは連載なのにストーリー後付け(だったらしい)という事情があるのかな。 もうひとつ、頭に「困ったときの」と付けたくなるほど便利のいい「●●●●●(いわゆる●●●)」でキメてくれちゃってるのも、人によっては文句の付けどころでしょう。私も、もう少し早い段階から伏線を仕掛けておいてくれたらな、とは思います。 これも前者と同じ事情に拠るものか。

そうそう、やはり嶺岸氏の画力は見逃せません。ちょっぴりヘタウマな所もありますが、登場人物群にメリハリ付けて魅力的に描く腕は素晴らしいです。特に主人公、そして途中参戦で彼の強い味方となる或る女性、たまらなく応援したくなります。 あと敵役、私の好きなジョー・ジャクソンに見えなくもありません。


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土屋ガロン
不明
ルーズ戦記 オールドボーイ(劇画)
平均:7.00 / 書評数:1