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[ 短編集(分類不能) ] ファーブル君の妖精図鑑 |
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井上雅彦 | 出版月: 2020年10月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
講談社 2020年10月 |
No.1 | 5点 | 猫サーカス | 2022/04/09 19:04 |
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美大を中退して母の故郷で働くことにした真亜梨が出会ったのは、黒づくめの服装に、虫眼鏡と虫取り網を持った奇妙な青年。誰にも見えない奇妙な存在の観察記録が記されていた。偶然ノートを読んだ真亜梨は、その記述に刺激され妖精の姿を絵に描く。この二人の「記録する」「絵を描く」という行為が、いくつもの事件の真相を明らかにする連作短編集。幻想めいた存在を扱いながらも、謎解きのそのものは現実を土台にしている。その構築は極めて手が込んでいて、繊細なガラスの工芸品を連想させる。舞台となる彩野辺の町も、独特の輝きを放っている。日本の田舎にありそうなリアリティこそ薄いけれど、ファンタジーとミステリの境界に位置する物語の舞台として、ここにはないどこかにありそうな場所として魅力にあふれている。 |