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[ クライム/倒叙 ] 恋人たちの森 |
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森茉莉 | 出版月: 1963年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
講談社 1963年01月 |
新潮社 1975年05月 |
新潮社 1981年04月 |
新潮社 1982年06月 |
筑摩書房 1993年08月 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2022/01/07 09:33 |
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どうせ暗黒系耽美小説ならば、人死にがなければオチがつかない、というものだ(苦笑)。まあだったら広義のミステリに入るんじゃないか、とも思う。強烈に人工的な文章だしね...で、耽美の真打ち、森茉莉の短編集。表題作の他に、同性愛が主題ではない「ボッチチェリの扉」、それにガチな「枯葉の寝床」「日曜日には僕は行かない」の4作を収録。
「恋人たちの森」ならギドウ・ド・ギッシュ(義童)×パウロ(巴羅、神谷敬里)、「枯葉の寝床」ならギラン・ド・ロシェフーコー×レオ(山川京次)、「日曜日」なら杉村達吉と伊藤半朱(ハンス)。こんな恋人たち(苦笑)。日本の話です。 夕陽の残映をうつす、金色のかがやきのある空は上方が特に痛く光り、その中に首をもち上げた駝鳥と横を向いた悪霊、骸骨の小人の形をした雲が黒い兇悪な地図のように群がり襲いかかるように浮かんでいた。 いやタダの状況描写ですって。一番ミステリ風の「枯葉の寝床」は、文学者のギランに囲われている美少年レオは、ふとした機会に、サディストでヤク中のオリヴィオに誘惑されて、さらに危険な快楽に目覚めてしまう。ギランはレオの中に目覚めた快楽に嫉妬しつつ、さらにレオとの愛欲に溺れていくのだが、レオの肌に残された鞭の痕に強く執着するようになる。オリヴィオが逮捕されたことを報道でギランは知るが、もはやギランはレオを「生贄」に捧げることでしか愛を実証することができなくなる... まあこんな話。強く内面化されたかたちでのサディズムが読みどころ。まあ確かに具体的な行為としてはツマラないものだからね、あれは。「恋人に決定的な心理的傷を負わせたい」という心理の変転は、宿命的な事件を引き起こすことでしか落着しない。ホワイダニットといえばそうかもね。 精神的なサディズムが実質のテーマの小説だから、ミステリの裡だと思う。ホントの人工楽園だからね....そこらも乱歩パノラマ風味の変形といえばそうかな。強烈にクセが強くて悪文に近いけど、ノリ方が分かればそうツラい文章ではない。 |