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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ]
異説 忠臣蔵
荒川法勝 出版月: 1990年07月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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青樹社
1990年07月

No.1 6点 メルカトル 2021/11/02 23:06
吉良上野介は生きていた。華やかな“仇討ち”の裏に隠されたからくり―。事件の謎の部分に鋭く切り込み、大がかりな陰謀を暴き出していく、その後の忠臣蔵。大胆な仮説をもとに、波瀾万丈のストーリーが展開する気鋭渾身の時代活劇巨編。
『BOOK』データベースより。

吉良上野介が生きていたら、という大胆な仮説の下に語られる忠臣蔵のその後の物語。しかし、その仮説がとんでもないとも言いきれない理由があり、必ずしも全否定できないと思わせる歴史の裏事情が垣間見えます。
一般的に忠臣蔵とは前半松の廊下に於ける浅野内匠頭の刃傷沙汰がメインで、中盤様々なエピソードが描かれ、クライマックスの討ち入りから四十七士の切腹で幕を閉じる形がほとんどです。本作は切腹から始まります。よって、赤穂浪士の活躍を期待していると裏切られます。

主役は赤穂藩の資金を持って夜逃げした卑怯者と言われている家老大野九郎兵衛で、実は大石内蔵助が吉良を討ち逃した際の予備軍の司令官として待機していたという設定になっています。後半に登場するやむに止まれぬ訳があって脱落したとされる高田郡兵衛も、大石の直々の命を受けて討ち入り後の重要な任務を任されたと本書ではなっています。果たして大野は吉良の首級を挙げることができるのか?
そしてもう一つのストーリーは完全なフィクションで、吉良が生きていることを知り、その動向を探る諜者がある人妻と合流し、その旅先で互いに惹かれ合う経緯を情緒的に描いたもの。この二つの大きな流れがやがて少しずつ干渉し合いながら進行していく形式を取っています。

作中、色々起こり過ぎて何を書いて良いものか分かりません。無論決闘シーンなどもありますが、それ程の迫力や生々しさはありません。ただ所々私の琴線に触れる描写が幾つかありました。全般的に凪のようなスタイルで描かれ、紆余曲折はあるもののダイナミックさには欠け、今一つ波に乗り切れない面は否定できません。登場人物で好感が持てたのは夫の行方を追う人妻の路乃で、これがまた可愛く健気で何とも言えない魅力を持っています。他にはあまり活躍はしていませんが脇役で光っていたのが寺坂吉右衛門ですかね。


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荒川法勝
1990年07月
異説 忠臣蔵
平均:6.00 / 書評数:1