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[ ハードボイルド ]
探偵の流儀
嶋岡探偵事務所シリーズ
福田栄一 出版月: 2013年10月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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光文社
2013年10月

光文社
2017年02月

No.1 7点 人並由真 2021/08/12 00:57
(ネタバレなし)
 静岡県浜松駅から電車で20分、人口37万人ほどの地方都市・篠戸市。そこでは初老の独身男・嶋岡淳一を代表とする、彼を入れて総勢4名の零細組織「嶋岡探偵事務所」が細々と営業を続けていた。だがある夜、その嶋岡が調査中に階段から落ちて重傷を負い、人事不省となった。残された所員で、嶋岡の片腕的な間宮慶介、元刑事の松代和久、20代前半のバイト所員・飯田忠彦は、事務所の収益が嶋岡の実績による信頼と人脈ゆえのものだったことから、所の解散も考える。だがそこに嶋岡の姪で、都内の一流商社OLだった佐久間美菜子が出現。美菜子は大恩ある叔父のために会社を辞めて、今後はこちらで介護にあたるつもりだった。だがそこで飯田が、篠戸市という土地が、血縁者の会社継承に肯定的な気風であることに着目。美菜子を新所長に迎えて事務所を続ける案を出す。この案を快諾した美菜子。だがこうして新生した嶋岡探偵事務所の前に現れるのは、強引な手段で客筋を奪おうとする競合他社の暗躍、そして嶋岡が担当していた案件を含む複数の事件の迷宮的な錯綜であった。

 光文社文庫版で読了。
 評者は著者のことは本サイトのメルカトルさんの書評で教えてもらったが、試しにそのあと読んだ2冊は、それぞれ、なかなか面白かった。

 それでこれが評者が手にする作者の著作3冊目になるが、適度にドラマチックな序盤、明快なキャラクターシフト。どうも美人女優、中堅二枚目俳優、若手イケメン俳優を揃えたテレビドラマ化を狙っているような気配の設定ではある。

 ただそれ自体は別に減点要素でも得点要素でもないので、あとはミステリとして小説として面白いか読みごたえがあるかだか、話を転がすテンポ、場面場面の見せ場の設け方、主人公たち以外のサブキャラクターたちの書き込み、そして何よりこういう一見モジュラー式、しかし実はやっぱりかなりのものがどっかで絡み合っていく複数の事件の錯綜ぶりなど、それぞれの部分でよくできている。
 ほとんどここまで事務所の担当する事件が絡み合うのも不自然? という感慨も生じないでもないが、その辺は重大な案件は深めに、そうでもない案件はそれなりに浅めに……といった差別化を書き手が心掛けながら、大筋が最終的にまとまっていくいくので、極度なリアリティ欠如という不満は当たらない。

 タイトル通りに、プロ私立探偵の仕事、その矜持の立て方が主題のひとつともいえるあたりは和風ハードボイルド風であるし、事件の成分的には地方都市の地盤の枠からもはみ出す社会派っぽいところもある。
 まあいろんな要素を覗き込みながら、最終的には最後まで飽きさせないで読ませる、集団チームのキャラクターミステリとして勝負しているという感じだが。

 100点満点でいえば、良い意味で70点作品。
 たとえるなら新幹線で往復3時間くらいの出張をするようなときとか、良い旅のお供になってくれるような一冊。
 シリーズ2冊目もすでに出ているようなので、またタイミングを見計らって読んでみよう。


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