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[ SF/ファンタジー ] ノンちゃん雲に乗る |
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石井桃子 | 出版月: 1967年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
福音館書店 1967年01月 |
KADOKAWA 1973年05月 |
岩波書店 1998年09月 |
光文社 2005年12月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2021/06/21 02:48 |
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(ネタバレなし)
東京の四谷生まれの少女・田代信子(ノンちゃん)は5歳の時に赤痢にかかって死線をさまよい、ふた月の入院の末に、どうにか回復した。信子の両親は九死に一生を得た娘とその兄を連れて家族4人で、東京駅からおよそ一時間半の距離にある、環境の良い菖蒲町に転居。そこで健康を回復したノンちゃんは、現在8歳。小学二年生に進級し、今では、転校する同級生・橋本の後任として、担任から級長を任命されるほどの優等生になっていた。そんなノンちゃんの願いはふたたび生まれ故郷の四谷に赴くことだったが、ノンちゃんがまた赤痢になるという、万に一つもの危険性を配慮した母と兄は、ノンちゃんを残して東京に行ってしまった。母たちの胸中に思い至らず、置いていかれたと泣きじゃくるノンちゃん。彼女はやがて、得意の木登りで高い木に登るが……。 昭和児童文学界の巨星で、太宰治の思い人であったとも言われる女流作家・石井桃子(1907~2008年)が太平洋戦争中から書きためて、終戦直後の1947年に大地書房から刊行した、ファンタジー児童文学の名作。 ただしこの元版の時点ではあまり話題にならず、のちの1951年に光文社のカッパ・ブックス(初期のカッパ・ブックスは、まだカッパ・ノベルスが発刊する前だったので、小説も扱っていた)に収録されてから、改めて大反響を呼び、ベストセラー化。文部大臣賞を獲得して、鰐淵晴子主演で映画化もされた。 評者の家には以前からカッパ・ブックス版の原作もあり、さらに1980年代から録画ビデオもあったのだが、映画の巻頭をちょっとだけ覗いただけで原作にも映画にも手つかず。どっちから読むか観るか迷いながら、現在まできてしまった(結果として、先に原作を一通り完読したわけだが)。 木から落ちた(?)ノンちゃんが、不思議な世界で仙人だか神様だかのような老人と出会う、という前半の部分は知っていたし、その辺までは、たぶん作品の題名からも映画のポスターなどからも、一般にもよく知られているところであろう(ということで、普段からネタバレを気にする評者だけど、今回、ここまでは書かせてください~汗~)。 ただしそのあとの小説の中身がどのような方向にいくのかはまったく知らなかったので、実物を読んで軽く驚いた(とりあえずこの辺も伏せておく)。 しかし手元のカッパ・ブックス版の折り返しでは、あの壷井栄が、夜もふけるのを忘れて読みふけった、と激賞しているが、21世紀の目で見るとさすがに微温的すぎるし、牧歌的な読み物に思える。 とはいえ終戦直後の時代にあって、この作品の瑞々しさが(元版の刊行時点ではまだ微妙だったとはいえ)次第に広く受け入れられていったというのはわからなくもない。 そういう意味で時代の波から消えていく作品かな、とも甘く見たが、終盤の部分でなかなかのショックを覚えた。いや、これは正にわれわれミステリファンのよく知る××××トリック(広義の)ではないか!? いやまあたしかに、小癪にも作者が指摘するとおり……(中略)。 情感を揺さぶられながら、最後まで読み終えると、それまでの物語のほぼ全体で抱いていた軽い違和感も、ああ……とうなずかされることになり、同時に作品全体がいっきに時代を超えた普遍性を獲得する。 グダグダ書かない方がいい作品だとは確実に思うので、この辺にするが、オトナがオトナの目で読むファンタジー児童文学の基本図書ではあろう。 心に響く人もそうでない人もいそうな気もするし、なにより作品に出合うまでのT・P・Oが限りなく影響するような一作、という気もするけれど。 3年前に、大好きなネイサンの『ジェニーの肖像』に、あえて6点つけたのとほとんど同じような思いで、今回も6点。 |