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[ 警察小説 ] 八兵衛捕物帖 |
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比留間英一 | 出版月: 1975年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
毎日新聞社 1975年01月 |
旺文社 1985年07月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2021/04/24 10:57 |
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「八兵衛捕物帖」といっても、時代劇では、ない。半七・佐七・伝七とか岡っ引きには「七」の字が似合うが、それを上回る「八」はリアルの昭和の警視庁捜査一課の名物刑事である。
人並由真さんの三好徹「ふたりの真犯人 三億円事件の謎」のご書評の中で、昭和の名物刑事平塚八兵衛氏に触れられているのを読んで、ついつい懐かしくなって探したら図書館にありました。著者は毎日新聞の社会部記者で、三億円事件の時効が迫る1975年の夏に毎日新聞夕刊の連載読物として掲載されて、本になったもの。いや中学1年生の評者、すっかり新聞を読むのも習慣づいて、この連載を愛読してたんだ。なので、本当に懐かしい本。 なので、内容は八兵衛氏全面協力の「生きた戦後事件史」。八兵衛氏を読み物仕立てで主人公にして、誘拐事件でもトップクラスの知名度を誇る「吉展ちゃん事件」、松本清張「黒い福音」で有名な「スチュワーデス殺人事件」、三億円事件など、八兵衛氏が活躍した著名事件に大きくページが割かれるほか、知名度は低いが「面白い」事件の話もある。あるいは「小平事件」「帝銀事件」「下山事件」など終戦直後でまだルーキーだったころに実際の現場を見て捜査にかかわった有名事件を「あのときはこうだった」と1章に。 八兵衛氏というと「落としの八兵衛」と異名をとった、取り調べ名人だからその取り調べのさまがとくに「吉展ちゃん事件」でうかがわれる。供述のウラを綿密に取って、その矛盾を丹念に突くことで、容疑者を心理的に追い詰めるプロセスが興味深い。けど外国人神父が容疑者だった「スチュワーデス殺人事件」はそれが通用しなったみたいだなあ... まあ、本当は八兵衛氏の取り調べは強引なこともあって、たとえば「大森勧銀事件」のように裁判でひっくり返ることもあるし、帝銀事件の平沢死刑囚の犯人説を主唱したのが八兵衛氏だったようだし...と功罪がやはりある刑事である。 で、時効が迫る三億円事件にもう一度注意を喚起するために、あえて八兵衛氏は定年退職を選んで、メディア露出をしていたのも思い出されて、懐かしい。「昭和」に浸れる本だから、「捕物帖」なのがある意味正鵠を得てる、かも(苦笑)。 平塚八兵衛氏を扱ったノンフィクションとしては、他に佐々木嘉信「刑事一代 - 平塚八兵衛の昭和事件史」がある。そっちも読んでみようかしら。 |