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[ ホラー ] 倫敦魔魍街 漫画 |
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JET | 出版月: 不明 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
朝日ソノラマ |
角川書店 1997年04月 |
朝日ソノラマ 2005年10月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2021/03/03 00:57 |
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久々に漫画したい。去年ホームズをやったから、〆に何かパロディを、と思っていたわけだけど、そういえば JET って、ある意味「ミステリ漫画の女王」なんだよね、と思って急遽本作をやってみようと。
横溝なら「獄門島」「本陣」「八つ墓村」に「手毬唄」「犬神家」「笛を吹く」に「悪霊島」、乱歩で「黒蜥蜴」、ホームズなら「バスカヴィル」はおろか「青い紅玉」「まだらの紐」も「白銀号」だって「黄色い顔」やら短編は全部で11本、ルパンなら「八点鐘」全部に、「エラリー・クイーンの冒険」からだって4作品。これだけミステリのコミカライズやった漫画家もいないでしょうよ。まあホームズもだけど原作に忠実なものが多いから、マンガで楽しむにはミステリマニアが作家買いしてもいい漫画家だと思います。 で、なんだが、ここでコミカライズを扱うのは何なので、オリジナル作「倫敦魔魍街」から。 ホームズの死後、トランシルヴァニアから魔都倫敦を訪れた二人組はホームズ探偵譚に憧れる狼男と吸血鬼だった。狼男は「ホームズ」を名乗って不死身の体を生かした体力勝負、吸血鬼は「ワトソン」を名乗って、生き物の強い感情を感知する能力を生かして、探偵業を開業した。幽霊のハドソン夫人が世話をする事務所に訪れる客は.... とまあこんな話。なので、本当に勝手に名乗っているだけ、という設定。推理というよりもアクション・ホラー。でもね、このところスプラッター規制が強くなっていることもあって、スプラッター大好きなJETは、雑誌から最近は敬遠されている噂も....でも本作連載は伝説のホラー誌「ハロウィン」。ゾンビもバラバラ死体も満載で、BL風味も忘れずに。 まあ、正典で互いに名字を呼び捨てで呼び合うホームズとワトソンなんだけど、これ名前で呼び合うとBLになっちゃうから、それをドイルは避けた、という話があるくらいのもので、この漫画もそこらへんはしっかり踏襲。萌え成分大量。 だから、正典のホームズ&ワトソンを期待しちゃいけないんだが、実のところ、こうやってホームズ実は狼男、とか「演じてる」姿が、すごく日本的で面白い、と思うのだ。これを一番端的に示したのが、単行本書下ろしの「大江戸魔魍街捕物帖」で、本作のホームズ(狼男)とワトソン(吸血鬼)、それに敵役のモリアティー(ホームズの弟)が、時代劇の世界に転生し、それぞれが黒門町の伝七、桃太郎侍、鼠小僧、他のJETの主役キャラが中村主水と遠山の金さんに扮し...でこの5人勢ぞろいで白波五人男の見得を切る。狼男でホームズで伝七で五人男、とキャラを猛スピードで着替えしているように目まぐるしい。野田秀樹の芝居のような面白味である。いや助六実は曾我五郎とか、鮨屋弥助実は平維盛とか、こんな「キャラクター遊び」というものが、実は日本のエンタメの伝統にしっかりと根付いている姿のようにも思われる。 |