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[ 青春ミステリ ] ハーフボイルド・ワンダーガール |
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早狩武志 | 出版月: 2008年09月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
一迅社 2008年09月 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | 2021/01/21 08:25 |
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(ネタバレなし)
「僕」こと高校生・湯佐俊紀は、医大生の兄・功一をバイク事故で失った。そして兄の死からひと月が経ったその日、俊紀は、ひそかな片思いの相手である幼馴染みの美少女・水野美佳から意外な告白をされる。その内容に動転する俊紀だが、そんな二人を見ていたのは、同じ学校のミステリー研究会会長である「あたし」こと、美少女の佐倉井綾であった。事態に関心を抱いた綾は、俊紀を半ば強引に助手にしながら、秘められた真実を探り始める。 裏表紙には「青春ミステリードラマ」と謳われているけれど、パズルミステリとしての興味は限りなく希薄(一応の隠された謎はあるが、真相を瞬殺で先読みできない人間はまずいないでしょ)。 正直、昭和の中学生が読んでいればいいようなラノベではあるが、こーゆー頭のいい(という設定の)「名探偵」女子が背伸びして、作中の現実の事件に首をつっこんでいくくすぐったい雰囲気は悪くない。 まあ重ねて言うが、本来はオレみたいないい年したオッサンが読むような作品ではないのだが(笑)。 ただそれでもね、大昔の少年時代にスレッサーの『ルビイ・マーチンスン』ものを読んだときの気分に通じるような<オトナの世界に憧れる子供の冒険を、ごく他愛ないミステリの鋳型に流し込んだ>風な食感はちょっとだけ快い。 ヒロインの綾には、こういう形質の作品のなかでの主人公としての魅力も感じた。 (やってることの一部は、まったくもって考えなしのお笑い行為なんだけど<そういうこと>を怖じずに実行してしまえる若さと幼さが、たしかに、フィクションでの「青春」として描けている、とは思う。) 本当にミステリ的にはナンもない作品。でもそんな真っさらな器に<なんか引っかかる部分>がポロポロ積み重なっていって、この評点。 |