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マーガレット・アトウッド | 出版月: 2020年10月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 2020年10月 |
No.1 | 7点 | 小原庄助 | 2020/12/24 09:54 |
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ディストピア小説の名著「侍女の物語」の同作家による約35年越しの続編だ。前作がキリスト教原理主義の台頭によって女性の生殖・出産が国家に管理されるという悪夢的な話だったのに対し、本作はその世界からのサバイバーたちの静かな連帯の物語となる。
重厚ながら、3人の語り手を擁する断章形式は読みやすい。監視国家ギレアデにおいて女性たちは、教育係の「小母」、司令官の配偶「妻」、家事手伝いで母親代わりも担う「マーサ」、出産のための機械である「侍女」の4階級に分類されるが、本作では司令官の娘アグネス、小母たちを組織する最高指導者のリディア小母、ギレアデ外の娘デイジーがそれぞれに語るのだ。 特にリディア小母は、ギレアデの成立過程や統制方法の裏話を明かす。忠義心の持ち主にみえた彼女も、保身と恐怖から国家の理想像を内面化してきた小心者の一面があり、今は手稿を遺すことでいわば内部告発に踏み込んでいく。「この手記を読んでいるあなたはだれだろう?そして、いつのことだろう?」ギレアデ滅亡後の未来に歴史的検証を託すのだ。 一方で、デイジーもアグネスも、大胆な行動によって自らの未来を切り拓く。このあたりはサスペンス要素もたっぷりで手に汗握る。女性の自由意志や性が徹底的に禁忌とされる本作の世界観は実にフィクション的ではあるが、現実社会でも女性の「声」は奪われがちで、それは現在進行形だ。 知性と行動、声を発する勇気が身を助け、世界に変化をもたらすという力強く温かなメッセージを受け取ることだろう。 |