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[ その他 ] 女であるだけで |
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ソル・ケー・モオ | 出版月: 2020年02月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
国書刊行会 2020年02月 |
No.1 | 6点 | 小原庄助 | 2020/06/22 10:20 |
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非主流であるがゆえにこれまで不可視だった人々や世界に、光をあてる。こうしたマイノリティー文学の政治的役割を果たしつつ、純粋な小説の魅力に富む作品。
メキシコの先住民の言葉、ユカタン・マヤ語で書かれ、なおかつ支配とは何かという根源的な問題を深掘りする。 オノリーナは夫を事故的に殺害してしまう。判決は20年の禁固刑。しかし人権派弁護士が恩赦をとりつけ5年で釈放に。物語ではそのことの顛末が、オノリーナの回想を通じ明らかになる。 14歳で、実父から粗野な男へとわずかな金品で売り渡された日から、彼女は所有物として絶対服従を強いられてきた。慣れぬ灼熱の土地への移住、日常的な暴力、慢性的な貧困、先住民ゆえの差別に加え、夫から他人の男との性行為を強要されて、長らく自尊心を損ない続けてきたのだった。 運命の好転は同じ民族の女性と知り合ったから。活力を取り戻し、夫の暴力に抵抗しえたのだ。収監されはしたのだが、この時ほど彼女が精神の安寧を感じたことはなかったろう。罪を犯し、自由得るという皮肉。この間スペイン語を習得し、おのが理不尽な境遇を客観視したからこそ、恩赦は先住民の特権かと問われた際、「白人の法律は白人のものであって、あたしたちには意味がない」と論理的に反駁できた。「インディオで女なんていったら、不幸の塊さ」 二重の意味で阻害されてきた彼女が、支配者側の無関心と法の不整備を糾弾する。法廷ものとしてのハイライトだが、ここで改めて、文学が声なき人々の声を掬い取る意義が浮き彫りになる。 |