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[ クライム/倒叙 ]
羊の国のイリヤ
福澤徹三 出版月: 2020年03月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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小学館
2020年03月

No.1 5点 猫サーカス 2020/06/19 18:51
サラリーマンが裏社会に足を踏み入れて変貌していく物語。よくある話だが、細部に工夫がある。食品メーカーに勤務する入矢悟は、食品偽装の告発に手を貸したことで左遷され、冤罪で逮捕され、退職を余儀なくされる。家庭も崩壊した。特殊清掃の仕事に就き、殺し屋に殺されかけるが、半年間だけの猶予をもらい、半グレ集団に拉致された娘を救出しようとする。平凡な男が己の獣性に目覚める物語は、北方謙三の「檻」をはじめいくつかあるが、本書が新鮮なのは、獣性よりも人間の可能性に目を向けている点でしょう。「世間や常識という柵に囲まれて搾取され」権力や暴力で服従されてきた羊(人間)が、「血を流さない人生は、生きるに値しない」といわれて血と暴力の渦へと飛び込み、恐怖と戦慄の中で人間のあるべき姿を見出す。指導するのは殺し屋で、何かと哲学的な言葉を授けて認識を一変させる。殺し屋の肖像が出色だし、娘との関係をクールに表現しているのも精神の暗黒を描く小説に向いている。


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福澤徹三
2020年03月
羊の国のイリヤ
平均:5.00 / 書評数:1
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