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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ] 血の伯爵夫人 エリザベート・バートリ |
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桐生操 | 出版月: 1982年10月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
新書館 1982年10月 |
新書館 1995年07月 |
アドレナライズ 2017年03月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2020/01/14 00:34 |
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「本当は恐ろしいグリム童話」で一山アテた桐生操が、キャリアの出発に近いあたりで書いていたエリザベート・バートリ(バートリ・エルジェーベト)の小説仕立ての評伝である。「彼方」でジル・ド・レーを扱ったばっかりだから、いいじゃないか、中世~近世初頭の快楽殺人の双璧である。ハンガリーの由緒ある大貴族の家に生まれ、ハンガリーの独立のために戦った英雄の未亡人であるが、その領地の若い女性の生き血を絞って、美容のためにまだ温かい生き血のお風呂に浸かった「女吸血鬼」である。
で、本作なかなかいい。意外な儲けもの、というのが評者の感想。ネタ本はあるようだけど、遠藤周作がほめた、というのがなかなか頷ける。作者(たち)の「若さ」が、ちょっとした客気になっていて、エリザベートの荒涼とした内面に踏み込めば踏み込むほど、それがロマンに昇華するよさがある。エリザベートは老いに追われて残虐行為に踏み切ったのであろうけども、作者たちの若さが、怪物を怪物ではなくて、自身の内面に忠実であろうとし続けた一人の女性の像を描くことになった。 乱れに乱れ、打ちに打って、この意識を息をつく間もない錯乱に導くこと。こうして自分を使い尽くし失い尽くして、破滅へと向かって急ぎながら、やがては解脱へ、そのぼろ布のようになった肉体から抜け出して、軽やかな精神として高く高く飛翔すること。 まあ、バタイユなんだけどね、ただの悪女大残虐物語ではなくて、怪物であることを選んだ女性の物語になっている。作者(たち)、明白にエリザベートの虚無と暗黒に共感しているのである。それが、いい。 |