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[ ホラー ] 鼠(ねずみ) 鼠シリーズ |
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ジェームズ・ハーバート | 出版月: 1975年10月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
サンケイ出版 1975年10月 |
No.1 | 6点 | tider-tiger | 2020/01/12 09:24 |
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~街に巨大なネズミが出現した。密やかに数を殖やし、人を襲い、街を浸蝕していく。ネズミに食い散らかされた遺体が街のあちこちで発見され、危うく難を逃れた者も――もしネズミに噛まれていたならば――24時間以内に死亡する。やがてネズミの集団は人が大勢集まる場所を狙いはじめる。~
1974年エゲレス。干支にちなんで今年の一発目にとも考えたが、新年早々えげつない話を書評するのも躊躇われ後に回した。作者のジェームズ・ハーバートはスティーヴン・キングとほぼ同時期にデビューした作家でイギリスでは当時かなりの人気を博していたらしいが、今となっては日本ではほとんど語られることもない。大々的な復権運動が起こるような作家、作品ではないものの、今読んでもけっこう面白い。 表紙にはSF長編小説とあるが、SF要素はほぼない。いわゆる動物パニックものだが、社会問題、環境問題などに踏み込んで教訓めいたことを述べるような作品ではない。プロットは非常に単純でネズミたちの暗躍と人間の反撃、この二点に絞られている。生徒がネズミの犠牲者となってしまった美術教師ハリスが主人公格で、そこそこの正義感と行動力をもった普通の人間として描かれている。 前半は巨大ネズミに襲われて人々が次々に食い殺されたり病死させられたりしていく。その際に犠牲者たちの人生、生活をいちいち描いて読者をそこそこ感情移入させてから、襲撃の状況が描写される。犠牲者をことさら美化することはなく、なかなか読ませる。あとがきでも指摘されていたが、5章などは短編として独立させても面白かったかもしれない。 後半は人間の反撃が描かれていくが、科学的にどうなのかと思う部分もけっこうある。特に巨大ネズミが生まれた経緯、病原菌の正体などは納得のいく説明がほとんどない。個人的には動物園のエピソードをもっと膨らませて欲しかった。 それほどグロテスクには感じなかった。プロットは単純だが、普遍的な面白さがある。リーダビリティは高い。俗な好奇心をくすぐる巧妙さ、丁寧さがあって、同じことの繰り返しの前半も非常に面白く読めてしまう。むしろ前半の方が面白いかもしれない。 ※一点非常に気になっている。 ハリスは十代の頃仲間と一緒にリンダなる女の子を輪姦したことがある。この事実は物語にはなんの影響も与えず、なんの意味もない。ただ言及されただけなのだ。 我思うに輪姦は犯罪の中でも特に卑劣な部類である。主人公格の過去にこのような背景を付与した理由がまったくわからない。読者をげんなりさせるだけではないか。 根拠はないが、誤訳を少し疑っている。ハリスと仲間たちはリンダを輪姦したのではなくて、乱交した。あるいはハリスとその仲間たちは順番にリンダの御世話になったというニュアンスだったのではなかろうか。 |