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[ SF/ファンタジー ] 白昼艶夢 |
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朝山蜻一 | 出版月: 1995年05月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
出版芸術社 1995年05月 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2019/12/09 13:31 |
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さてみなさん、変態さんの時間ですよ!
「新青年」の昔から、「探偵小説」の中にいわゆる「変態心理モノ」が含まれてきて、乱歩もそういう要素を強く持っていたのは、常識だと思うんだがねえ。朝山蜻一といえば、「宝石」デビューで1950年代に「宝石」を舞台に活躍した作家である。懸賞応募で評判を取ったデビュー作「くびられた隠者」、新人作家コンクール第一席獲得の「巫女」、探偵作家クラブ賞候補になった「ひつじや物語」「僕はちんころ」などなど、いわゆる探偵文壇でのプレゼンスもきっちりあった。下って70年代には、「幻影城」での「蜻斎志異」の連載もあれば、各種アンソロによく収録されてもいたし...と、異端だけどマイナーとも言えない、非常に面白い立ち位置の作家だったわけである。 評者昔アンソロで読んでたけど、やはりインパクト抜群だった。今回の再読したものなんか、詳細覚えてるもんだなあ。で、一口に「変態」といってもいろいろあるわけで、蜻斎老人の場合は「サドマゾ」「ボンテージ」「ゴム」「小人趣味」がメイン。だから「オトナの趣味」の部類に入って「合意があるなら、いいんちゃう?」のものだ。SMでも「家畜人ヤプー」みたいなスカトロはないし、マゾヒズムでも荒廃したような自己破壊の側面は薄くて、一途な可憐さみたいなものが伝わるから、状況は「悲惨」でも悲惨じゃない。一言で言えば、「SMの水木しげる」みたいな芸風。特殊化して極端化した愛欲の果てに、ふっとファンタジーに入り込むような明朗さとユーモア感がある。蜻斎老人が描く女性像は、みな自己の快楽に忠実で、その忠実さの果てに斃れようとも、その顔には「戦士の微笑み」を浮かべているような...そんな印象。 この出版芸術社の「ふしぎ文学館」で出た傑作集だと、「宝石」をにぎわした有名作をほぼ収録。昭和ミステリ秘宝の「真夜中に唄う島」で「幻影城」連載の「蜻斎志異」が読めるから、併せれば大体内容を把握できる作家だと思う。狭義のミステリ色は薄いが、まさに「風俗奇譚」といった色合いの短編小説としての味わい深い作品多数。どんでん返しも決まるし、テクニカルには結構上手な作家だと思う。終戦直後の風俗がベースだが、ファンタジックな味付けからあまり古臭い印象もない。今読んでも十分楽しめる作品集である。 個人的には「僕はちんころ」「巫女」「ひつじや物語」あたりの有名作に、「有名なだけあるよね」と思わせる特異性と切れ味があってお気に入り。あとそうだね「人形はなぜつくられる」。ナイスタイトルでしょ。オトナの童話と思って楽しんでいってね。 |