海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ その他 ]
風のかたみ
福永武彦 出版月: 1968年01月 平均: 8.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


新潮社
1968年01月

新潮社
1974年01月

新潮社
1979年09月

新潮社
1988年02月

No.1 8点 makomako 2019/10/05 22:58
 福永武彦氏の作品は大学時代に魅力に取りつかれて読んだものでしたが、この作品は知りませんでした。
 当時は純文学的なものが好みでサスペンス小説に興味がなかったからかもしれません。
 たまたま見つけて懐かしく読んでみると、氏特有のあでやかで美しい調べが久しぶりに味わえました。途中でああこれは今昔物語がベースにあるようなお話だと気が付いたのですが、解説を読むとやはりそのようです。

本格推理小説ではないので多少お話の内容を書いてしまいます。、
 このお話は登場人物が素晴らしい。ことに主人公の次郎は実に男らしく誠実で、ただ一途に萩姫を思う。萩姫は人を見る目がないのか、家がよいのみのろくでなしの保麿をひたすら思う。保麿は萩姫が好きなのだがすべてを捨ててもこの娘と一緒になろうとまでは思っていない。勝ち気で美人の楓は次郎が好きでたまらないが、絶対この恋は成就しない。さらに盗賊の親玉も萩姫が好きになり必ず奪って我がものとしようとする。これではどうしようもないではないか。
 その通りどうしようもなくなり最後は悲劇で終わります。本格物ではないのですがトリックもあるのですよ。
 草の花や忘却の河のような繊細で悲しい美しさをこの小説でも味わえます。


キーワードから探す
福永武彦
1970年01月
加田伶太郎全集
平均:6.75 / 書評数:4
1968年01月
風のかたみ
平均:8.00 / 書評数:1