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[ SF/ファンタジー ] セミオーシス |
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スー・バーク | 出版月: 2019年01月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 2019年01月 |
No.1 | 8点 | 小原庄助 | 2019/04/22 10:18 |
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他者を理解するのは難しい。それが他の天体の生物との「ファーストコンタクト」だったとしたらなおさらだろう。
この作品は、環境破壊で荒廃した地球に見切りをつけ、別の惑星に入植した数十人の人間たちとその子孫、7世代100年に及ぶ年代記だ。平和を意味するラテン語「パックス」と名づけられたこの星には、多様な植物が繁殖し、動物も存在した。 当初、人類は地球同様に生態系の頂点に立とうとするが、地球より10憶年前に誕生したこの星の植物は、高い知能を持っていた。彼らは果実に有毒物質を生じさせ、人類を排除しようとする。やがて人類は彼らと戦うことから、共存を目指す方針に転換していく。 パックスでは、「共和国」の精神に共感し、その目標を共有する生物はすべて市民と認める方針をとる。だが、知的植物と人類は、共生と平等を重んじつつ、互いに警戒を怠らない。相手を尊重しながら、より多くを得ようとする。いわば相互に「家畜化」をもくろみ続けるのだ。 両者の関係性をはじめパックスのありようは、国民統合や政治文化における米国的な価値観や行動原理を想起させる。これはSF化された米国の精神史でもあるのだ。 高度な知性を持ち、人類とも意思の疎通可能な「竹」のスティーブランドは、長い寿命と巡らされた根と茎を持っている。歴史を俯瞰する彼の言葉が、時に「旧約聖書」の神と人類の契約のように響くのも興味深い。 |