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[ 青春ミステリ ]
きみの分解パラドックス
井上悠宇 出版月: 2016年08月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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KADOKAWA/富士見書房
2016年08月

No.1 6点 メルカトル 2019/04/13 23:33
天使玲夏は普通じゃない。感情表現が希薄で何事にも冷淡な態度を取る一方で、物をバラバラにするということに対して人並み以上の情熱を持っている性格は、きわめて異質と言わざるを得ない。天使玲夏の幼なじみで何よりも平穏を望む少年・結城友紀は、彼女と共に総合パズル研究同好会へと入部する。部長のカワシマ、片瀬愛莉、長谷部環希、玲夏、友紀の同好会メンバー5名は“アドレス”と呼ばれる犯人による、バラバラ連続殺人事件の謎を追うが、興味本位で調査を進める最中、校内で1人の生徒が殺害され―。
『BOOK』データベースより。

上記の内容紹介に一つ誤りがありますので一応訂正しますと、正確には「バラバラ連続殺人事件」ではありません。詳しい記述はありませんが、ただ単に何者かによる連続殺人事件というだけです。最後の事件では死体の一部が欠損していますが、他はその全容が明らかにされていません。

時折見せる、ハッとさせられるような表現が幾度となく私の琴線に触れます。そのせいもあり、この人の文章が私は好きです。本当に何気ない言葉であったり台詞であったりするのですが、うーん、なかなか説明が難しいですね。これは言わば感性の問題であって、分かる人には分かると思います。
さて本作ですが、天使を始め結城や他の同好会のメンバーや教師たちそれぞれが、どこかに異常性を持った人間ばかりで、青春ミステリと言っても爽やかさとは無縁の世界となっています。表面上は和気藹々に見えても、その裏で各々秘めた内面を隠しており、ダークな一面を醸し出しています。ミステリとしては決して派手ではありませんし、高度なトリックを駆使しているわけでもありません。しかし、独自の世界観を押し出しているのは間違いないと思います。物をバラバラにすることに生きがいを感じる天使と、それを元通りに復元する結城のコンビネーションが、作品に意味を持たせることにもなっています。


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井上悠宇
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