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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 東京探偵団 漫画 |
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細野不二彦 | 出版月: 1985年12月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
小学館 1985年12月 |
メディアファクトリー 2002年03月 |
No.1 | 8点 | クリスティ再読 | 2019/01/02 16:39 |
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新春乱歩三連発の〆は本作。「乱歩と東京」の主題である「都市論としてのミステリ」をバブル初期の東京を舞台に、「少年探偵団」して実現するという、これほどクレバーな戦略のマンガがあるの?というくらいの名作である。
少年探偵団、というと、父性&分析的理性を象徴する明智先生と、誘惑者であり倒錯者である怪人二十面相との間で、小林少年を巡る恋の鞘当ての物語として読まれるべきなのだが、本作ではもはや超自我である明智は存在し得ない。自立したゲイの少年としての小林少年=ジャッキーが、怪人二十面相=黒男爵との間で繰り広げる機智の闘争=ラブゲームの物語なのである。 なんて固いこと書いちゃったが、正直言ってさ、ゲイの少年をヒーローにした少年向けマンガなんてそもそもあったっけ?(相方も守銭奴の女の子と力仕事担当のマゾヒストで苦笑)。掲載誌がマイナーな「少年ビッグ」だったから知名度は低いけど、当時から細野不二彦の隠れた大名作として有名だった作品である。まあこの人、そもそも結構ミステリタッチは多いね。作者は絶対「乱歩と東京」を読んでると思うよ。 明智先生がいないかわりに、ジャッキーを支えるのは「シティ・ジャッカー・カード」と呼ばれる王道コンツェルンのVIP専用の「魔法の」カードだ。バブル初期の経済的高揚感を反映して、マンガなので奇想天外な「お金の使い方」で事件を解決する。これがなかなか突き抜けていている。ビルをまるまる買い占めるなんて当たり前、たとえそれがサンシャイン60であってもさ。マンガのホラ話感をうまく使えているのが、いい。 新書だと全6巻になるが、後半に秀逸なエピソードが多い印象がある。首都高の渋滞をネタにした「虹が渡る橋」、JR民営化に絡めて環状線の東京からの「脱出」を描いた「MEBIUS EXPRESS」、第一生命館のマッカーサー執務室が舞台の「星条旗の幻」、皇居に潜入して「あの人」と蛍狩りをする「無影燈下の蛍」、「東京タワーとモスラ」を再現してみせる「TOKYO-WAR」など、奇想に満ちた冒険譚を連発している。狭義のミステリ色は薄いが、「都市を巡る冒険ファンタジー」としての完成感は抜群である。けどねえ、このバブル期の風景ももう消えているものが多いわけだ....感慨。 |