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[ 社会派 ] 逆転 アメリカ支配下・沖縄の陪審裁判 |
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伊佐千尋 | 出版月: 1977年08月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
新潮社 1977年08月 |
岩波書店 2001年10月 |
No.1 | 8点 | クリスティ再読 | 2018/07/07 23:23 |
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酔っぱらいのケンカの結果、一人が怪我を負い一人が死んだ。逮捕された若者4人の裁判を追ったノンフィクション作品である。なんていうと「はあ?」という声が上がりそうだが、死んだのが在沖米軍の兵士、被告は沖縄人のカタギな青年たち、時は昭和39年で沖縄は未返還の時代、沖縄での裁判はアメリカ流に陪審裁判だった...となれば、話は盛り上がる。
米軍基地との取引メインの商社を経営する主人公(=著者)はその陪審に選ばれる。他の陪審にはウチナンチュは2人だけ、あとはアメリカ人たち。米軍による捜査は極めて秘密主義で、公判で明らかになる「捜査内容」は疑義もかなり多い。「栄光ある軍人を殺害した現地人には見せしめに厳罰を!」と米軍のメンツにかけて、強引な捜査が行われた印象だ。主人公はこの陪審裁判の間に、経営する会社に理不尽な税務検査と、基地からの契約の破棄、という隠然たる圧力を受けていた。 「事実は小説より奇なり」とは言うけども、ここまで誂えたような状況もないもんだ。主人公は陪審の評議で抵抗する。そのさまはまさに「12人の怒れる男」。被告の調書はかなり捜査当局のシナリオに沿った作文臭いものだし、怪我をしただけの米兵は「何も覚えてない」と証言拒否に近い不審な態度だ。物証も混乱している...と主人公は丁寧に指摘するが、「兵士に手を出す不埒な現地人は吊せ!」と言わんばかりの白人の陪審もいる。死んだのは軍曹から一等兵に降格された粗暴な問題兵士なんだけどね。主人公の抵抗によって審理は長引き、みなの嫌気が指してきたあたりで主人公は「逆転」を狙ってある「取り引き」を考える... 本作は大宅壮一ノンフィクション賞の受賞作、というか70年代というと「苦海浄土」とか「テロルの決算」とか注目度が高かかった時代である。それらに負けない力作で、のちに裁判員裁判の導入のときに本作が改めてもう一度注目されたこともあったな。2018年2月に著者が亡くなったこともあり、いい機会なのでとりあげようと思ってた。社会派法廷ミステリとして十分面白く読める「ノンフィクションなのが信じられない」くらいの傑作。 |