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[ SF/ファンタジー ] シルトの梯子 |
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グレッグ・イーガン | 出版月: 2017年12月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 2017年12月 |
No.1 | 8点 | 小原庄助 | 2018/05/29 09:21 |
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現代物理学とは異なる架空の理論が支配する未来世界を舞台にした作品を好んで描くイーガンは、SFファンから熱い支持を集めているが、その魅力を未読の人に伝えるのは難しい。
本作は、「量子グラフ理論」「サルンペト則」「量子単集合プロセッサ」といった架空の用語が登場し、おまけに舞台は約2万年後という設定。「難しそう」と思う人は多いだろう。でも大丈夫。ここに出てくる理論がわかる人はほとんどいない。それでも面白く読ませるのがイーガンだ。 人類は自己をデータ化することで桁外れの寿命を獲得している時代。宇宙ステーションで行われたある実験が予想外の暴走を引き起こす。別の物理法則を持つ宇宙が発生してしまったのだ。「新真空」と命名されたこの宇宙は、元の宇宙を侵食し始める。 そして約600年後。拡大を続ける新真空との境界面近くの宇宙船では、新真空への人類の順応を模索する「譲渡派」と、新真空を破壊して元の宇宙を維持しようと考える「防御派」が対立を深めていた。 描かれるのは、自分たちの価値観や存在をも揺るがすような巨大な変化に対して行動する人々の姿だ。それは現在の私たちにも無関係ではない。 人類の存亡を懸けて、未知の「宇宙」へのさまざまな仮想理論を駆使しながら、アプローチを続ける知的挑戦に加え、対立するグループの駆け引きや暴走など冒険要素が満載。さらに両派に分かれた研究者の恋物語もある。理論は難解だが、ストーリーはサービス満点の、理系冒険大ロマンだ。 |