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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] リモート・コントロール ニック・ストーン |
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アンディ・マクナブ | 出版月: 1999年05月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
角川書店 1999年05月 |
No.1 | 5点 | tider-tiger | 2017/10/09 19:37 |
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元SAS隊員のニックは現在は対テロリストの秘密作戦に従事している。緊急の任務で二人のテロリストの後を追ってアメリカに行くニック。ところが、二人の行く先を突き止めたところで「すぐに引き返して来い」という不可解な指令が。帰国の飛行機の時間まで少し余裕があったので、近くに住む友人を訪ねることにしたニックだが、友人家族は娘を一人だけ残して惨殺されていた。
ネット古書店でエルモア・レナードを注文したところ送られてきた一冊。カバーはエルモア・レナードで中身は本作だった。まったく知らない作家だったが、もしかしたら、これは運命的な出会いかもしれないと思い、読んでみた。話のネタとして傑作、もしくは超駄作を期待していたのだが、中途半端に面白いというネタにしづらい水準だった。悔しいので書評を書くことにした。 なんでも著者は元SAS隊員だったそうで、本を書くたびにSASに原稿を送ってチェックして貰っているそうだ。このチェックというのが、間違い探しのためではなく、事実を書き過ぎての機密漏洩を防ぐためだという。 確かに主人公が任務を命じられてから慌ただしく出発していく様子など、細部に至るまで非常にリアリティがある。 小説としては、序盤でニックが追い込まれていく流れはいい。この状況でニックはどう巻き返すのか、非常に読み応えがあり、先が気になった。ところが、遠慮なく主人公をイジメ抜く序盤に比して、友人の娘を連れての逃避行に入ってからは敵の追跡が少し甘くなる。本気で来られたらまあ主人公は勝てそうもない。作者としては手加減してやるしかなかったのか。 「敵が手加減してくれたおかげで主人公が勝つ」冒険スリラー系の作品でこの手の弱点を抱えている作品はかなり多い。 そんなわけで中盤が少しだれたかな。 友人の娘と心を通い合わせていく流れはどこかぎこちなく(ある意味リアル)、また、この娘に対してときおり顔を覗かせるニックの冷徹非情さはこの世界にあってはリアルなのかもしれないが、ここはもう少し感情移入してやって欲しかったかな。逆の意味でクィネルの『燃える男』を思い出してしまった。 そして、ラスト。タイトル『リモート・コントロール』の意味が判明、なかなか緊迫した場面で悪くないと思うのだが、個人的にはあのやり口はちょっと気に入らない。敵の正体も月並みに感じた。 最後までなかなか楽しく読めたのだが、水準作といった感想。 情報機関などの活動に興味ある人は細部のリアリティなどかなり楽しめるかもしれない。 最後に某古書店さんへ 読んでしまったので金を返せなどと言うつもりはないけど、次からは気をつけてね。 |