海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1706件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.666 5点 最長不倒距離- 都筑道夫 2020/01/23 10:46
 作者の意図は判るが、論理が徒にチマチマしているし、物語としてあまり面白くない。私の読み方が下手ってことで。
 夜中の12時に置時計が鳴る場面があるけれど、客から文句が出ないのだろうか。

No.665 8点 キリングクラブ- 石川智健 2020/01/23 10:45
 この導入部で『DINER』(平山夢明)を連想するのは致し方なかろう。正直、前半のうちは“或る種のパターンに則って上手に書いており見事、だがそれだけ”と悔し紛れのイチャモンのような感想だった。しかし後半の、設定自体をレッド・ヘリングに据えたが如き展開にはびっくり、脱帽。
 第四章、脳外科医の意外な行く末はとても面白かった。第五章の出版社のエピソードはその後に全くつながっておらず不要なのでは。

No.664 5点 大江戸ミッション・インポッシブル 顔役を消せ- 山田正紀 2020/01/23 10:44
 天保の江戸を舞台に闇の勢力が激突(密室殺人も発生)。人間離れした遣い手がアレコレ登場するが、ギリギリ現世に留まっている(か?)。
 近年はSF回帰の傾向が目立つ作者だが、こんなシリーズに対する意欲もあるのかと意外に思った。終盤は強引な展開で無理に見せ場を作った感あり、以下次巻。

No.663 6点 イヴの末裔たちの明日- 松崎有理 2020/01/20 11:04
 結構バラバラな作風の短編集だが、器用貧乏には見えないところが立派。御題は脱獄・宝探し・新薬実験……最も異色な「まごうかたなき」が特に良かった。
 ただ、思わせぶりなリンクが有ったり無かったりで、“アレは何だったの”と言う疑問が幾つか無くも無い。例えば、主人公がキスチョコを路上に散らしたことと宇宙生命体がキスチョコ型であることは関係があるのか? とか……。

No.662 6点 密葬 ―わたしを離さないで―- 江波光則 2020/01/20 10:59
 物語的にも心情的にも内向きに完結した『鳥葬』にどんな続きがあるのかと訝ったが、それでも人生は続くわけだ。捻りは無いけれど、嫌な人物を魅力的に描く腕も、投げ遣りな文芸論も、なかなか悪くない。

No.661 7点 赤い部屋異聞- 法月綸太郎 2020/01/20 10:56
 オマージュ作品を集めた短編集。とりあえず、オマージュ云々とは無関係に概ね楽しめた。ベストは「まよい猫」。
 私が知っていた元ネタは一つだけ。元ネタ既読ならもっと違う景色が見えたかもしれないが、それは判断出来ない。オマージュを先に読んでしまうことで、いざ元ネタを読む時に興が殺がれている可能性はある。
 元ネタがどの作品か事前に判れば読者が主体的に読む読まないを選べるが、タイトルから元ネタを予想出来るのは2編だけ? 元ネタの一覧表は無く、各短編のあとに解説が付されているので、途中のページをパラパラめくって確かめることになるが、それだと余計なネタバレが目に入りかねないのが問題。
 事前に判ればいいとも限らず、読みながら嗚呼この話はアレかぁと気付くのが楽しいかもしれない。しかし(多分)なかなか幅広いセレクションで、元ネタを全部知っている読者は限られるのではないか。

 つまり、作品集の体裁に、読者の“何をどういう状態で読みたいか”と言う選択肢を奪ってしまう側面があるようだ。好きな作家なので読んだが、こういうのはこれきりにして欲しい。好き度のもっと低い作家だったら“オマージュ短編集”と言う時点で敬遠したと思う。

No.660 5点 七つの棺- 折原一 2020/01/20 10:53
 トリックの傾向を考えるとパロディ形式の選択は妥当だけれど、ユーモアのセンスが自分にはあまり合わなかった。“要は見せ方なのだ”との作者の言に同意(見せ方が合わないのでアウト、と言う意味で)。

No.659 6点 鳥葬 ―まだ人間じゃない―- 江波光則 2020/01/16 13:23
 鳥葬とは、モノの本によれば、単に遺体を処分する便宜として食わせるわけではなく、鳥を媒介にして空に死者を葬る、との思想だそうな。なんてロマンティックな。ついでに資源のリサイクルにもなる。私の望む葬送法第1位だ。2位は医学の為に献体してそのまま標本になること。
 いや全然そんな話じゃないんだけどね。“鳥葬”も比喩表現だしね。

No.658 5点 青列車の秘密- アガサ・クリスティー 2020/01/09 12:01
 次々に新しい人物が登場して、ええっ多過ぎるよと思ったが心配無用、読み進めるとそれぞれ適切なところに落ち着きスッキリ整理された物語だ。この作者には紋切り型のキャラクターを生き生き描く才があり、風俗小説として面白い。ミステリとしてはつまらない。
 あの人の頭文字が●だとは、推測は可能だが気付かなかった。“彼女(メイド)の名前はエレンなんですか、それともヘレンなんですか”と言う台詞が日本人向けの伏線なのである。

No.657 6点 贋作ゲーム- 山田正紀 2020/01/09 11:59
 作者曰く“実行不可能な作戦を数人のチームが達成する”シリーズの短編4本。個々の作戦は面白いし、短編サイズで過不足ないネタを上手く配している。しかし基本コンセプトが共通なのでどうしても似通った印象。主人公がみな世を拗ねてうらぶれた中年男なので尚更。そして、同趣向の長編に比べて切迫感が無いと言うか、やや淡白。

No.656 7点 屈折する星屑- 江波光則 2020/01/05 12:50
 厳しく言えば、殺伐とした不良の青春小説の舞台を宇宙時代に移しただけ。とは言えアレンジの仕方としては悪くないし、小手先の技ではなく作者がきちんと作品世界を“引き受けている”感じで好感が持てる。タイトルを始めとして散見されるデヴィッド・ボウイ用語は鼻に付くが、作者にとっては重要だったのだろうからまぁ大目に見よう。

No.655 8点 神々の埋葬- 山田正紀 2020/01/05 12:48
 『神狩り』『弥勒戦争』『神々の埋葬』で“神シリーズ”とも呼ばれるらしい。しかし山田正紀は以降も繰り返し神をテーマに取り上げているわけで、その呼称はあくまで初期の視点による過去のものと捉えるべきだと思う。
 さて本作。スケールの大きさは言うまでもなく、若書きなりに『神狩り』等と比べると登場人物は存在感を増したが、まだストーリーを勢いで駆け抜けてしまった感がある。美味しいキャラクター設定だけしてガンガン使い捨てている。例えば後藤貢あたりのエピソードを一つでいいから(伝聞ではなく)挿入してあれば、ハードボイルドな結末の無常感もいや増したのではないか。

No.654 8点 弥勒戦争- 山田正紀 2020/01/05 12:45
 乾いた筆致の仏教SF。水面下の全体像がきちんと在って、その上で氷山の一角だけ断片的に描いている感じ。逆に言えば“ここをもっと深く掘ってよ!”と言う箇所があちこちに見られ、決して小説巧者ではない。しかし妙な生々しさが時折グイッと鎌首をもたげる。なんだこれ。

No.653 7点 落涙戦争- 森田季節 2020/01/05 12:39
 泣かせ屋にロックオンされた泣けない少年。涙の意味を問う(笑)理不尽な一週間が始まった――軽快な文章に絶妙な重さを乗せる才が映え、表層の雰囲気だけでなく堅いコアも持った作家のように思える。西尾維新の戯言シリーズの後半のパスティーシュ、のような騙しの物語。

No.652 3点 災厄の町- エラリイ・クイーン 2020/01/05 12:36
 何か変だ。“3通の手紙”が、どうにも納得出来ないのである。
 殺人計画を立てる。そして、実行したわけでもないのに、その状況を知らせる(つまり架空の内容の)手紙を書く――何の為に? そんな準備が必要? リハーサル(笑)?
 “妻を殺す”ごっこ遊びで、敢えて実際に書くことで心の奥の鬱屈を昇華させようと試みた、なんて解釈の方がまだ判るけどなぁ。“手紙=殺人計画の証拠”と言うことを誰も疑っていない。この奇妙な世界設定、目をつぶるには大き過ぎる。
 出番少ないけど長女ローラのキャラクターは好き。

No.651 9点 法月綸太郎の新冒険- 法月綸太郎 2020/01/05 12:35
 法月綸太郎の小説作品は概ね読んでいると思う。最も印象深かったのが本書に収録の「身投げ女のブルース」である。起点に偶然を含む点はちょっと引っ掛かるが、真相として提示される鮮やかな反転がそれを補って余りある。
 他の収録作も作者のポテンシャルを遺憾なく発揮した(もしくは、余計な寄り道で浪費することを上手く回避出来た)名品が揃っていると思う。

 ただ、以下ネタバレするけれども、「リターン・ザ・ギフト」の最終章を読んでいる途中で、穂波が“腑に落ちない”と言ったことと同じ疑問を私も抱き、それに対する回答には得心が行かない。ところが考えてみれば、偽装交換殺人(未遂)によって、弟を妻殺し犯に見せかけているわけで、理由としてはそれで充分な気もする

No.650 7点 いざ言問はむ都鳥- 澤木喬 2019/12/30 10:46
 分類学者の視点で世界を切り取る豊穣な筆致は、回りくどさも含めて大変心地良い。一方、掘り出される謎については、論理の面白さと同時に強引さも感じる。
 差し引きすると後者のほうが勝ってしまい、ミステリとしてはいまひとつ、なんだけどそう斬って捨ててしまうには惜しい魅力があった。

No.649 6点 天井の足跡- クレイトン・ロースン 2019/12/30 10:41
 記述者が地の文に挿むユーモアが良い。ストーリーはちょっとごちゃごちゃしている。これは書き方次第でもっと読み易くならないかなぁ。
 “天井の足跡”は事件に於いてさほど大きなウェイトを占める謎ではない。それがタイトルでなければ、あのトリックでもそこまでがっかりしなかったかも。私は、先入観で作品の総合的な傾向を見誤ったまま読み進んでしまった感がある。

No.648 7点 賞金稼ぎスリーサム!- 川瀬七緒 2019/12/30 10:37
 推理力ではなく調査内容から一歩一歩核心に迫る展開、はみ出し者が集まったチーム、結構唐突に出て来る犯人の異物感など、『法医昆虫学捜査官』に準ずるものではある。但し本書の主人公達は警察官ではないので、バックアップが少ない反面、行動の自由度は高い。そのへんの設定の違いを上手く使い分けられれば、前述のシリーズと並んで作者の二本柱になるポテンシャルはあると思う。個人的にはもう少し捻って欲しいけど……。

No.647 7点 マジックミラー- 有栖川有栖 2019/12/30 10:32
 ネタバレしつつ書くが、アリバイ・トリックで良く判らない点がある。某が、白鳥を小松で降りずに、わざわざ金沢まで行って小松へ引き返す手間をかけた理由は? 少しでも長く白鳥に乗っていたかった? どこかに書いてあるのを私が見落とした?

キーワードから探す
虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1706件
採点の多い作家(TOP10)
山田正紀(89)
西尾維新(69)
アガサ・クリスティー(64)
有栖川有栖(50)
森博嗣(48)
エラリイ・クイーン(47)
泡坂妻夫(38)
歌野晶午(28)
小林泰三(27)
島田荘司(24)