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[ 本格/新本格 ]
星読島に星は流れた
久住四季 出版月: 2015年03月 平均: 5.80点 書評数: 10件

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東京創元社
2015年03月

東京創元社
2016年08月

No.10 6点 nukkam 2021/07/10 21:50
(ネタバレなしです) ライトノベルミステリーの書き手として知られる久住四季(くずみしき)(1982年生まれ)が一般読者向け作品を意識したらしい2015年発表の本書は、第1章が「宇宙を満たすもの」、最終章の第7章が「地球最後の日」という構成ですがSF要素は全くなく、高確率で隕石が落下すると噂の孤島を舞台にした本格派推理小説です。第5章の終わりでは「読者への挑戦状」こそありませんが主人公に「やっとわかったよ、犯人が」と言わせています。「壮大なトリック」は面白いアイデアと思いますが演出的に壮大感が弱いのが惜しまれるのと、「何度でも繰り返す」はいくらなんでも無茶ではないかという気がしないでもありません。でも疑問点や矛盾点を列挙しながらの推理説明が丁寧な本格派として楽しめました。

No.9 6点 虫暮部 2017/05/25 12:07
 設定が工夫されていて、事件が起こるまでの前半部分もそれなりに楽しめた。語り手が無色透明で、彼の過去の出来事が取って付けたようなエピソードに感じられた。アレを運ぶのは女性には体力的に無理、とかソレにそのひとがひとりで気付けたとは思えない、というのは根拠薄弱だと思う。
 孤島モノはそもそもこういうものだ、と割り切って、既視感があるとかパターン通りとかは極力考慮せずに読もうと思った。

No.8 4点 E-BANKER 2017/04/15 09:49
2015年発表の長編。
作者プロフィールを読む限りでは、本作が初の本格ミステリー作品の様子だが・・・

~天文学者サラ・ディライト・ローウェル博士は、自分の住む孤島で毎年天体観測の集いを開いていた。ネット上の天文フォーラムで参加者を募り、招待される客はほぼ異なる顔ぶれになるという。家庭訪問医の加藤も参加の申込みをしたところ、凄まじい倍率をくぐり招待客のひとりとなる。この天体観測の集いへの応募が毎年高倍率となるのはある理由があった。孤島に上陸した招待客たちの間に静かな緊張が走る中、滞在三日目、ひとりが死体となって海に浮かぶ・・・奇蹟の島で起きた殺人事件を描く!~

うーん。
こういうタイプというかプロットのミステリーは、あまりにも偉大な先達たちがいるためか、どうしても「アラ」が見えてしまう。
他の方も触れられているし、作者がラノベ出身だからなのかどうか分からないが、どうしようもない「薄っぺらさ」は私も感じてしまった。

本作のプロットや仕掛けの「肝」って、結局、隠された動機ってことになるよねぇ・・・
だとしたら、相当お粗末ではないか?
最初からいかにも怪しげで、裏に何かあるに違いないムードプンプンの集い。
これでは、読者も最初からかなりな部分を予測してから読み進めることになる。
参加者ひとりひとりの描き込みも不十分で、作品世界に入り込めないまま唐突に発生する殺人事件。
その割にはページ数の半分位は前フリに使われている・・・

結局は「プロット倒れ」ということでよいのではないか?
多くの先達たちが手掛けた「孤島もの」にチャレンジするなら、もう少し(かなり?)練り込みが必要だろう。
ページ制限等あるのだろうけど、この内容では書店で平積みするほどの内容ではないと断言する。
とはいえ、こういう手のミステリーは決して嫌いではないので、またチャレンジして欲しいなとも思ったりする。
(アメリカが舞台となった理由は「作者あとがき」で分かったが、主要登場人物ふたりが日本人である理由はなんだ? 親近感か?)

No.7 7点 makomako 2017/04/02 09:59
 なかなか面白かった。
 登場人物が少なく、孤島といったまさに本格推理小説の代表のような設定で大丈夫かなとも思ったのですが、まず納得のいくものでした。
 読みやすく、登場人物もひどく異常なこともなくすっきりしていますが、逆にあくが少なく若干平凡といった感は免れませんでした。
 でもよかったですよ。
 次作に期待できそう。読んでみようかな。

No.6 6点 名探偵ジャパン 2016/12/26 10:50
「トリックスターズ」の作者、一般作品も書いていたのですね。
隕石とそれにまつわる蘊蓄をトリックに絡ませ、他にはない意外な動機とそれにまつわる殺人事件を完成させました。舞台の根本に関わる設定を偶然やオカルトに落とし込まず、犯人の思惑に直結させたのは見事だったのではないでしょうか。

ただ、まだライトノベルの癖が抜けていないのでしょうか。主人公が「妻と娘を亡くした三十半ばの男」にどうしても見えません。誰に対してもタメ口で無愛想。でも周囲の美女、美少女にはモテモテ。そしてそれを「やれやれ」と鬱陶しそうにする。高校二年生のラノベ主人公以外の何ものでもありません。「未成年がタバコを吸ってはいけませんよ」と注意したくなります。

No.5 7点 青い車 2016/11/27 22:10
 島という舞台装置が、心地よく詩的な雰囲気を創り上げており自分の好みとよく合致します。隕石の落下やその捜索が謎解きと結びつく無駄のなさもまた良しです。特に音の処理や、地に足の着いた可能性潰しの手際に感心しました。作者はライトノベル出身とのことですが、軽く読めるのに適度に推理の醍醐味も味あわえる、バランスのいいものを書いてくれる人だと実感しました。次回作を強く望みます。

No.4 6点 蟷螂の斧 2016/08/30 08:31
恋?に絡めたラストで後味はいいですね。真相(仕掛け)が本作の肝で非常に気に入っています。地球上で数年かかったとしても、宇宙時間からすればほんの一瞬の出来事なのですから・・・犯人の気持ちと私の気持ち(笑)。たまには夜空をみるのも楽しいですよ。まあ私の住む都会では無理ですが・・・。ということで毎年、満天の星(天の川)を求めて旅をしています。夜晴れること。新月であること。でこれが結構難しいのです。余談でした。

No.3 6点 まさむね 2016/02/11 10:52
 典型的な孤島系クローズドサークルもの。とはいえ、サスペンス的な要素は少なく、軽妙なキャラ設定も相まって、殺伐とした雰囲気はありません。「閉じた」島の中で、「開かれた」宇宙(から来た隕石)をモチーフにしたコントラストも、なかなかに美しい。個人的にはど真ん中の設定です。
 真相自体は正直「いかにも」といったモノで、パンチ不足は否めないのですが、このご時世(?)に、正面切って孤島モノに挑んだ姿勢は買います。コッチ系に目がない方は、一読してみては?

No.2 4点 yoshi 2015/08/23 03:25
ラノベ的な人物造形は面白かったのですが、肝腎の真相がイマイチ。
いくら何でも真犯人が、
「Aが○○しているところをBに見つけさせて、
二人の間にトラブルが発生してBがAを殺してしまう」
ことを期待するなんて迂遠すぎます。
「操り」の構図にちょっと説得力がなかったかな。

No.1 6点 kanamori 2015/04/22 18:52
女性天文学者サラ・ローウェル博士が住むボストン沖の孤島で、今年も天体観測の集いが催され、6人の招待客の中に家庭訪問医の”俺”も選ばれた。そして、二日目の夜の隕石の落下騒動につづき、翌朝、海岸に浮かんだ招待客の死体が発見される-------。

ランドル・ギャレットのダーシー卿シリーズを思わせるSFファンタジー風のミステリ「トリックスターズ」シリーズが、ラノベ・レーベルにも関わらず一部で注目を浴びた作者による久々の長編ミステリ。
数年に一度、隕石が落ちるという不思議な島を舞台にしているが、ファンタジー要素はなく、かなりオーソドックスな”孤島ミステリ”という印象を受けた。手垢のついた設定に、どんな斬新なアイデアを織り込んでくるのだろうと期待して読んでいましたが、太陽系の惑星や隕石をあるものに見立てたアイデアは面白く、一部で光るロジックも見られるものの、謎解き部分はおおよそ予想できる内容で、真相はややインパクトに欠ける感は否めないかな。登場人物たちは、ラノベ出身作家らしい魅力的な造形で、スラスラと読めるところも良ですが、真犯人が採った犯行方法にはキャラクター的に違和感があった。


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