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[ 本格/新本格 ]
濡れた心
多岐川恭 出版月: 1958年01月 平均: 5.80点 書評数: 5件

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講談社
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No.5 7点 クリスティ再読 2022/02/13 10:42
懐かしい作品。中学生時代のミステリファン初期に読んだんだけど、実は本作が、初めて犯人&トリックをしっかり当てた作品だったことでも思い出深い。女子高校生の同性愛を扱った作品だからこそ、評者の中で何か共振するものがあったのかな。

改めて読むと、物語の中にミステリを融合させる手際がいい作品。50年代だからこそ、はっきりした探偵役なしで、平等多視点でフラットに記述するのが、なかなか斬新でもある。だから「日記」という記述形式にあまりこだわり過ぎない方が、いいんじゃないかな。神視点三人称を使うのはもう「古臭い」。全員がある意味「信頼できない語り手」の錯綜する情報の渦の中、恋愛感情の機微を隠しつつ、誇示しつつの虚実アリで巧みに構成された作品のように感じる。実際、登場人物の誰もが情熱を燃やしながら、日記の体裁を取りながらもそれに素知らぬ顔をして、その真情は意外に他人の方が洞察していたりする記述の妙が出ている。

でいうと、被害者の不良教員の独白的な日記だって、極めて「偽悪的」なもので虚勢を張っているのが読み取れようというものだ(でも、そのダメさ加減に崩れた魅力がある...)。それに対していつでも冷静な少女や、功利的な青年、鋭い洞察力を隠し持つ老婆など、それぞれの何食わぬ記述の交錯が、それ自身「ミステリ」と言えばその通りか。

いや...日記なんて後で読み返すと、自分自身に体裁屋になっているの気づいて、赤面することのが多いものなのさ(苦笑)

No.4 7点 斎藤警部 2020/09/18 17:17
本家のフレンチもいいが日本のフレンチも素敵よ。文章も独特にまず流麗。成人男子の書く少女趣味が妖異に花開いちゃってますが、日本人のフレンチ趣味全開に通じる所があるかも。日記をリレーする数多の重要人物がどれも個性はっきりでミステリ的に魅力的。人数多いもんだから、そのバトンタッチの組み合わせの妙がまた旨味あるのよね。何しろ怪しい奴が多すぎて、かなりトリッキィな真犯隠匿してそうな気配も濃厚で、先が気になること気になること。解決篇では、心理に軸足のロジック展開が冴えてますね。それは核心を衝く弾丸の数のロジックにまで波及。(弾丸そのものの件はご愛敬でしょうか)バッジの件もご愛敬だけど、質の良い、スパンの長い後出し証拠で嫌いじゃありません。 恋愛、友情、同性、異性、未来ある年少者へのまなざし。。。貧富の格差。身分の差。社会派とは違うけど社会側面もミステリの不可欠要素として描かれている。 意外な真犯人というより、意外な犯行動機というか、いや違うな、意外な人間関係こそ、まるでクリスティを思わす巧みさで隠匿された、やられたーって感慨の深いものでした。 ただ、途中、妙に本格調で野暮な取り調べ描写がブレーキ掛けるとこは少しあくび出たな。。そこんとこもう少し巧みにトランジションしてくれたらもっと良かった。 銃刀法施行直前の物語、発表は施行直後(昭和33年)。 ところで、本作のテレビドラマ版、問題教師役が岸田森なんですね、あまりにイメージぴったりで笑ってしまいました。

No.3 6点 人並由真 2019/10/16 14:23
(ネタバレなし)
 1956年の晩春。秀才で可憐な女子高校生・御厨典子は、同校の水泳部に所属する美少女・南方寿利に好意を抱く。典子は、同じ秀才でやはり水泳部の一員である少女・小村トシに仲介を願い、寿利に接近。実は寿利の方も典子に惹かれており、二人は瞬く間に相思相愛の関係になった。だが退廃的ながら繊細さもある中年の英語教師・野末兆介も典子に魅せられており、その想いは典子の心を動かす。さらに御厨家ほか、それぞれの女子たちの各家庭の周辺でも多様な人間模様が渦巻くが、そんななか、ある夏の日、学校の周辺で殺人事件が……。

 まだこんなメジャーなもの読んでませんでした、シリーズの一本(笑)。
『猫は知っていた』に続く、乱歩賞に輝いた国内新作実作長編の二本目だが、当時の受賞の背景としては、①全編を登場人物交互の手記(日記)形式で綴った手法の新鮮さ(国内ミステリにまったく前例がなかったとも思わないが)、②さらに異色のレズビアン青春小説という主題、③凶器の謎をメインにしたトリッキィさ、その三要素の相乗感が評価されたのだと思う。
 
 ちなみに②の登場人物のほぼ全員が「日記」をつけているというのはメタ的な便法を考えなければリアリティ皆無だが、まあこれは笑って許そう。むしろ個人的には、女子たちの一人称がみんな「あたし」なのが単調でキツかった。21世紀の新本格作品とかだったら、読者の読みやすさを考えて、当たり前に「あたし」「わたし」「私」とかに、キャラクターの自称を振り分けられているのでは。

 ミステリ的にはいろいろと面白い着想を狙っているのはよく分かるのだが、××技術的に、21世紀……いや1940年代の時点で(少なくとも西洋の鑑識技術なら)絶対に看過できないトリックであり、プロットなのは厳しい。ただしその辺にツッコむと100%崩壊する内容だしな、これ。昔の作品だからと、見て見ぬふりするのが吉か。

 小説の技法的にはとても読みやすい文章だし、登場人物の造形もうまいんだけれど、大枠の書簡形式が先の一人称の問題もふくめて、いささかモノトーンすぎるのが難。内面描写や作中イベントの振り分けで、どうにか退屈ぎりぎりを逃れた感じ(ただし情報をジワジワ小出しにしていく手練ぶりは見事)。
 しかしながら、終盤の展開。ギリギリまで真相も真犯人も明かされないあたりのサスペンスはなかなかで(個人的には、犯人の予想はついたけれどね)、ある意味で、作品全体の構図が大きく反転? する感覚も悪くない。クロージングのしみじみした情感も頗る良し。

 ちなみにこの作品、何十年か前に大場久美子主演の2時間ドラマになって、DVD化もされてるんだよな。機会があったら、観てみたいものである。

No.2 5点 nukkam 2014/10/17 11:22
(ネタバレなしです) 1958年発表の長編第2作で女子高生の同性愛を扱った作品と紹介されており、それだけでも読者を選びそうですね。男の私は気にしませんでしたが仮に男同士の同性愛だったら読むのをためらったと思います(笑)。官能小説風ではありませんが、かといってプラトニック・ラブでもない微妙な描写です。また片方の女性は男からのアプローチに嫌悪感を示しながらもはっきり拒否するわけでもなく、なかなか複雑な人間関係になっています。登場人物の手記(日記やメモ)で構成されたプロットがユニークで、多彩で繊細な心理描写が光ります。ちゃんと動機、機会、手段を推理する本格派推理小説になっていますが、謎解きの興味以上に犯罪が登場人物たちの人生に与えた影響の方が気になります。登場人物の1人がもう未解決でもいいじゃないかというようなことを言っているのも納得できます(もちろん未解決にはならず、ちゃんと真相は明らかになります)。

No.1 4点 こう 2010/03/08 00:44
 日記形式で女子高生の同性愛をテーマにした乱歩賞受賞作でした。当時としては斬新なテーマだったと思いますしこの趣向が受けたのでしょうがミステリとしては弱くこの作品で受賞できたのが不思議な気がします。


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