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[ 短編集(分類不能) ]
捕獲された男
多岐川恭 出版月: 不明 平均: 6.00点 書評数: 1件

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No.1 6点 2020/06/01 18:55
 戸田和光氏の多岐川恭著作リスト(若干改訂版) http://www7b.biglobe.ne.jp/~tdk_tdk/takigawa1.html
に依れば、たぶん著者二十三冊目のミステリ作品集。寡作なイメージのある多岐川だが、実際にはコンスタントに長短編を量産した多作家で、桃源社を中心にどう数えても四十冊以上の短編集を刊行している(もちろん時代小説は除く)。
 ただ最初期の『落ちる』『黒い木の葉』以外は、オール未文庫化。「昭和40年代前後に刊行された推理小説の短編集は、笑ってしまうくらいに、一冊も文庫化されていない」らしい。国会図書館ですら完全に揃ってはいないようだ。今持って『落ちる』未読の評者は、多岐川短編にはアンソロジー収録作「笑う男」「黒い木の葉」「みかん山」位しか接していない。よって纏まった作品集に当たるのは、ツテを辿って借りたコレが初である。なお、もののついでにamazonも調べたが、本書の存在は影も形も無い。
 収録作は表題作のほか、ご一緒にどうぞ/イン・プレイ/炎と繩梯子/酔いどれデカ/結末の終り/蠟燭を持つ犬/鼠の笑い の全八篇。アンソロジー向きのスタンダードなタイプが少ないのと後半が弱いのとが難だが、いずれもこの作者らしい後を引く読後感で、癖のある男女関係は長編同様のもの。特に前半四作品は読み応えがある。
 「捕獲された男」は捨てたはずの財閥令嬢に絡め取られ、死んだような存在と化していた男が、ある事件を切っ掛けに全てを吹っ切り、この作者お馴染みのニヒルな存在に変貌するストーリー。心中直前に憎いヤツの殺害を試みるカップルの物語「ご一緒にどうぞ」と同じく、多岐川長編の縮刷版といった趣がある。
 編中トップは女嫌いの脅迫者とその甥っ子、彼に恋する少女と脅迫相手のハイソカップルを巡る人間模様「炎と繩梯子」。少年の理想像が崩れる様は、久生十蘭「母子像」を思わせる。賭けゴルフを利用した殺人計画「イン・プレイ」も、加害者側まで不確定要素モリモリで、一筋縄ではいかない。
 これらに比べると「酔いどれデカ」「蠟燭を持つ犬」はちょっと強引な構成。後者のセオリーを外した異様なムードは買えるが、トリックは完全に無理筋。残りの二篇「結末の終り」「鼠の笑い」はやや短めで、それ程の出来ではない。
 総合すると粒揃いとはいかないが十分及第の6.5点。この後『指先の女』も借りることになっているが、この分だとそっちにもかなり期待が持てる。


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多岐川恭
1988年07月
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処刑
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指先の女
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変人島風物誌
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私の愛した悪党
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1959年01月
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氷柱
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落ちる
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不明
おとなしい妻
捕獲された男
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