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[ 法廷・リーガル ]
最後の希望
ホープ弁護士
エド・マクベイン 出版月: 2000年12月 平均: 4.50点 書評数: 2件

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早川書房
2000年12月

No.2 5点 ことは 2024/02/18 16:03
いつものウォレン視点に加えて、犯行側視点、キャレラ視点なども組み込み、ホープ視点がかなりすくない。事件も87分署物にありそうなもので、ホープがゲストの87分署物とみても違和感がないほどだ。シリーズても下位かな。
ホープ・シリーズをひととおり読み終わったということで、全体を概観。
大きく3期に分けられる。1期は、1から5作。2期は、6から8作。3期は、9から13作。
1期は、女に弱い主人公が、女と関わりながら事件を調査する物語。ホープのひとり語りで、ホープの私生活にもウェイトがおかれている。70年代後半に書きはじめられているので、同時期のネオ・ハードボイルの流れを組んでいるのだと思う。(マット・スカダー・シリーズの始まりが同時期) 個人的にはこの時期が好き。
2期は、人称を3人称にし、主人公と距離をとったため、1期の個性が薄れて、あまり特徴のないミステリになったと思う。
3期は、主人公の周りにサポートメンバーを追加し、キャラクター小説のウェイトを増した。それぞれ語りかたを工夫してあるので、面白さはある。
全体を通して評価すれば、リーダビリティがどれも高く、一定の面白さが保証されているところが最良。けれど安定はしているのだが、突出している作品はほとんどない。例外が5作目「白雪と赤バラ」で、これだけは抜群の傑作。
まあ、昔の記憶をたよりに書いているので、今読んでどう思うかは、保証できないのだが。1期を読んだのは20年以上前ばかりだしなぁ。再読してみようかな。

No.1 4点 2019/10/19 09:20
 誰もが望んでいたような夢のような天候が続くフロリダの一月、サマヴィル&ホープ法律事務所のオフィスに美しい顔立ちの青い目の女性が訪れた。三十四歳のジル・ロートンは離婚手続きのため、仕事を見つけるという名目で北に旅立った夫ジャックを探し出して欲しいという。彼は半年前、共通の友人クレア・フィリップスにばったり会ったのを最後にぷっつり音沙汰なしだった。
 その晩十一時、ノース・ガレイ・ロード付近にあるカルーサの浜辺でジャック・ロートンという男が撃たれて死んだとの知らせを受け、マシューは現場に駆けつける。死体は半裸で四肢に針金のハンガーが巻きつけられ、顔面にショットガンを見舞われていた。だが現場で身元確認を行ったジルは、マシュー・ホープとモリス・ブルーム刑事に告げる。それはジャックではないと――
 1998年発表のホープ弁護士シリーズ最終作。第6作『シンデレラ』同様分類だと 倒叙/クライム 寄りの作品。巡回でたまたまカルーサ・カドペド美術館へと回ってきた〈ソクラテスの杯〉なる時価二百五十万ドル相当の美術品を、最新の防犯設備を掻い潜って盗め!という強奪物に「誰が最後に笑ったか」テイストをプラスしたもの。タイトルこそ"THE LAST BEST HOPE(ホープ・シリーズ最後にして最良の作品)"ですが、看板には偽りアリ。
 アイソラ美術館で件の物件を目にしたジャックが強奪計画を立て、バイの同棲相手メラニー・シュワルツが裏でジルと組みそれを横合いからかっさらおうとする。ジルの依頼も偽装。他方ではジャックの仲間の一人で金庫破り専門のキャンディ・ノウルズが、リーダーの素人臭さに見切りを付け始めている・・・
 こういった状況に現場に偶々居合わせた主人公ホープが絡むのですが、全然いいとこなし。前妻スーザン共々恋人にフられるは殺されかけるわで、完全に心折れて終わります。「いっそ弁護士も辞めようかな」みたいなことも匂わせたりして。〈最後の事件〉にしてはあんまりですね。モースに続いて今度はホープにアタックしたんですが、前者とは差がありすぎます。
 元々〈殺人童話〉としてスタートしたこのシリーズ。離婚やネグレクトなど生々しいアメリカの現実に晒される子供たちを主題に猟奇的な犯罪を描いたものですが、縛りのキツさから枷を外したことで逆に執筆の意義を見失ってしまったようです。「どうせ同じキャラ物なら87分署の方読めばいいじゃん」と。当初はマクベインも本シリーズに意欲的でしたが、版元の要請が厳しかったとも聞きます。
 スティーヴ・キャレラも調査に協力させてサービスしていますが、やはり第10作「メアリー・メアリー」以降の凋落をリカバリするには至りませんでした。この後87分署シリーズ第48作「ビッグ・バッド・シティ」ではキャレラ側がホープに協力を求めるそうですが、ヒーロー失格した彼が少しでも立ち直ってくれてることを望みます。4.5点。


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