皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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ことはさん |
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| 平均点: 6.14点 | 書評数: 324件 |
| No.324 | 4点 | 乙女の悲劇- ルース・レンデル | 2026/04/29 18:42 |
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| かなり退屈な読書だった。
メインの趣向は、途中からばればれだし、この趣向は先見性も評価できない。読後に少し考えただけで、日本作家の有名短編や、ホームズのある短編に、類似趣向があることを思いついた。 趣向以外にも、文章面でいろいろと引っかかった。ひとつひとつは些細な点だが、読書の流れがたびたび止まるため、全体としてはかなり減点。思ったことを列挙してみる。 まず、情景描写が少ないため、場面が絵として浮かばない。そのせいか、登場人物がいつどこにいるのかを読み逃してしまい、戸惑うことが何度もあった。たとえば、ウェクスフォードが急に家にいるように受け取ってしまったりする。ウェクスフォードについても、思考は描かれるが、感情はあまり描かれないので、キャラクターが立ってこない。捜査についても、物的証拠を検討することは少なく、関係者の状況や関係性を探るだけに終始している印象だ。そのため、犯人の特定も根拠薄弱に感じる。例えば、途中の家宅捜索も根拠薄弱で、それは「ウェクスフォードもダメ出しされるでしょ」と思う。発想の飛躍もあまりないので、ミステリ的カタルシスを感じない。 「ロウフィールド館の惨劇」につづき、今回もあまり好みに合わなかったので、これはもうレンデルは読まないかな。 |
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| No.323 | 7点 | 法月綸太郎の不覚- 法月綸太郎 | 2026/04/29 18:09 |
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| 久しぶりの法月綸太郎の短編集。安定した面白さだ。
事件の進行をリアルタイムに追うのではなく、法月親子の会話などを通して事件の全体像がまとめて質疑されるので、短い紙幅の中でもかなり複雑な事件の構図が語られる。そのかわりキャラ立ちに割かれる記述は少ないので、キャラ読みはまったくできないが、謎と考察については極めて密度が濃く、それを期待するならば実に楽しめる。 ただ、短編集全体でみると、本人があとがきで書いているように、「思考のトラック」が狭くなっているのは、少し残念なところ。また、どれも複雑な構図を切り替える話なので、法月短編の代表作「都市伝説パズル」ように、“切れ味”によって長く記憶に残るタイプではない。(複雑すぎて忘れてしまう) そのため、「新冒険」、「功績」のような”文句なしの好短編集”というわけにはいかないかな。 各短編の寸感。 「心理的瑕疵あり」 かなり変わった手がかりから、風変わりな構図を導き出す。あとがきによると、「犯人当てとして書かれて、当てた人がいた」とのことたが、当てる人もすごいな。 「被疑者死亡により」 この構図の切り替えには、かなり意表をつかれた。本集のベスト。 「次はあんたの番だよ」 ホラーテイストが法月作品ではめずらしい。この構図の切り替えも好み。 「平行線は交わらない」 綸太郎が、事件の考察の配信を検討するのは、ちょっと新鮮。展開は好みだが、動機は強引な気がする。 |
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| No.322 | 5点 | それでも旅に出るカフェ- 近藤史恵 | 2026/04/19 19:51 |
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| まずは、本作はミステリではない。
前作と変わらないのは「”日本ではあまり知られていない世界のお菓子”を各話でフィーチャーしつつ、カフェの女性オーナーと主人公の交流を軸にしている」ところだが、日常の謎の要素がなくなり、人情噺となっている。ミステリではなくなってしまった。 するすると読めるが、人情噺の点でも、前作のほうがよかったな。また、物語に関係する海外の街についても『たまごの旅人』と重なる部分があり、少し残念。 続編があれば読むと思うが、もうミステリには戻らないな、きっと。 |
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| No.321 | 5点 | ロウフィールド館の惨劇- ルース・レンデル | 2026/04/19 19:22 |
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| 昔、学生時代に読んだ。その頃の私は「謎と解決」以外に興味がなかったので、どうなるかが冒頭に明かされている本作はつまらなかった。
いまは謎解き以外の要素も楽しめるようになってきたので、今読むと、自分がどのように感じるのか興味があり、再読してみたのだが、ううん、やっぱりいまひとつだった。 なにが駄目だったのか自己分析してみると、冷静な三人称他視点の書き方が合わなかったのだと思う。現実感を増すために意図的に採用したのだと思うが、ルポタージュに近づけた文体なのだろう。これがどこかのれなかった。 終盤の捜査パートも、それまでと違いすぎて、とってつけたよう。 当時、評判になったのは、冒頭の衝撃からだろうが、そこにはやっぱりインパクトを感じるが、それ以外は刺さらなかった。 |
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| No.320 | 2点 | A先生の名推理- 津島誠司 | 2026/04/07 03:03 |
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| 今年になって2つも投稿があったので、我慢ができずに投稿だぁ。他書評に「一般に評価が非常に低いか、忘れられている作品」とあるように、低い評価の感想もぶち込みますよ。(これが一般の評価だよね? そうだよね?)
本作のどこが受け付けないかというと……。 ・冒頭にあわらわれる事象を、登場人物たちが、なんの改めもなく「不可解だ」といいだす。 ・その事象を「不可解」とするならば、最低限「こういうことではない」と確認する必要があるのではないか、と考えると、真相がまさに「こういうこと」 ・もしくは、物理的にありえない「こういうこと」が真相という気か、と考えると、真相がまさに「こういうこと」 というわけで、悪い謎解きミステリの典型というのが私の評価。謎解きミステリは、「謎と解決」さえ整えれば一応成立するので、もっとも簡単に作れる小説だと思うのだけど、だからこそ「謎と解決」に対する評価はシビアであるべき。私の評価軸では、本作の「謎と解決」は文句なしに最低ラインです。 他書評に「ナンセンス小説」の評があるけど、そうなのか? そう見れたら楽しめるのか? そういう視点はなかったけど、うーん……私にはどうしても見直せないなぁ。 そういえば、収録作の「叫ぶ夜行怪人」は、「ミステリ-の愉しみ (第5巻)、奇想の復活」で、島田荘司からサンプルとして作家たちに配られた作品だった記憶がある。「奇想の復活」は、「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」、「どんどん橋、落ちた」、「重ねて二つ」、「バベルの塔の犯罪」などの初出でもあって、思い出すといい選集だったなぁ。 |
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| No.319 | 5点 | トネイロ会の非殺人事件- 小川一水 | 2026/04/05 23:36 |
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| 小川一水のミステリ系作品。でも、そこはSFを主戦場とする小川一水だけあって、SF的な味付けがある作品がおおい。どれもなかなかよくできているが、あまり琴線には触れなかった。
「星風よ、淀みに吹け」 個性的なSF的な舞台設定と、その設定だからできる仕掛けが凝っている。キャラの書き込みがもっとあれば面白かったかも。仕掛けだけが記憶に残る印象。 「くばり神の紀」 ある設定を導入しているのだか、そこから展開される説明は、やっぱり面白い。小川一水は、こういう「社会の成り立ち」の説明はお手の物ですね。ベストを選ぶなら本作。 「トネイロ会の非殺人事件」 状況設定は意表をついていて面白いが、いろいろ説得力がない。設定から必然的に登場人物もおおくなるのに、あまりページ数がないので、ひとりひとりのキャラ立ちに紙幅も使えず、群像劇として立ち上がってこないので、いまひとつ。解説に「良質な舞台劇のよう」とあったが、たしかに舞台にしたら面白くなるかも。説得力のなさは、役者の演技力があれば押し切れるし、キャラ立ちの弱さも役者の個性で補完できる。舞台化したら見てみたいな。 |
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| No.318 | 5点 | 教室が、ひとりになるまで- 浅倉秋成 | 2026/04/05 23:19 |
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| 期待していたものと読み心地が違った。「伏線」が惹句として喧伝されていたので、謎と反転を期待していたが、読んでいて思い出したのは「ジョジョ」だった。”謎の能力をもつ敵と対峙し、敵の能力を見破ることで敵を撃破する”と書けば、ほら、本作と「ジョジョ」の両方にぴたりと嵌る。(と思ったら、解説でも言及されていいた。そりゃそうだよね)
「ジョジョ」の面白い作みたいに、対決の流れで細かな伏線と反転はあるが、なにか味わいが違うんだよなぁ。大きな構図の反転といったものでないからかな。 ミステリ的興趣以外では「素敵なクラス」での青春物だが、描かれる負の感情の部分が、身もフタもないという感じで、ここは私の好みでなかった。 |
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| No.317 | 5点 | 混戦- ディック・フランシス | 2026/04/05 23:14 |
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| 航空機のパイロットが主人公の作品。
よいシーンは、中盤の航空機のトラブルのシーン。ここは緊迫感がありハラハラさせて、フランシス作の中でも上位にくる好シーンではないかと思う。ラストもかなりインパクトがあり、なかなかよい。 しかし、ストーリー展開はひねりがなく、予想がつくし、恋愛描写についても、脇キャラも立ってはいるが、主人公の気持ちはよくわからない。語り口は安定のフランシス節なので、もっと共感できる部分があれば、かなり面白かったのにと思う。 |
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| No.316 | 5点 | 消えゆく光- マイクル・ディブディン | 2026/04/05 22:38 |
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| 奥付によれば本作は1993年の作品で、黄金時代ミステリを踏まえつつ(作中にも黄金期作品からの引用がある)、ひねって作ったミステリ。
章立ては3部構成で、後半、いくつもの反転を仕込んでいる構成は好みなのだが、キャラ立ちがいまひとつなので、あまり楽しめなかった。 もっと面白くできそうなんだけどなぁ。なんか残念。 |
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| No.315 | 6点 | ときどき私は嘘をつく- アリス・フィーニー | 2026/04/05 22:29 |
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| デビュー作ということだが、やはりフィーニーは最初からフィーニーだったのだな。フィーニーを読むのは3作目だが、「彼は彼女の顔が見えない」にも書いた下記の特徴が、本作にもほぼ共通している。
「登場人物はかなりしぼられている。章立ては細かい。章の切り替え毎に視点人物を切り替え、そこに続きが気になるような「引き」がある。視点人物の語りには、”信頼できない語り手”だろうかと思わせるところがある」 相違点といえば、「視点人物の切り替え」が「時間軸の切り替え」に変わっているくらいだろう。 本作については、タイトルから「ときどき私は嘘をつく」と言っているように、真正面からの”信頼できない語り手”に取り組んでいる。それをふまえて、いくつもの意外な展開を途中に仕込んで飽きさせない。 既読2作と比較すると、「引き」の点で本作はやや劣る気がする。そこは、デビュー後に作家として成長していった結果なのだろう。だから、試しにフィーニーを読んでみようというのなら、本作はすすめないかな。他のフィーニー作を読んで楽しめたなら、本作も楽しめるはず。 |
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| No.314 | 7点 | エイレングラフ弁護士の事件簿- ローレンス・ブロック | 2026/04/05 21:39 |
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| 同じ枠組みの中で、いかにバリエーションをつけるかという、よい見本。つづけて読んでも飽きさせない。
ブロックの語り口がうまいこともあるよなぁ。例えば最初の話は、登場人物2人の会話シーンが2つあるだけなのに、まったく退屈しない。 まあ、それでも、1つ1つの話はワン・アイディア・ストーリーなので、採点はここまで。もっと高得点を付ける人がいても納得だけど。 |
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| No.313 | 5点 | さよならダイノサウルス- ロバート・J・ソウヤー | 2026/03/29 23:38 |
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| 「ゴールデン・フリース」がよかったから期待していたが、これはのれなかった。
読み終わって振り返ると、現実には存在しない設定が次々と投入される点が大きいのだろう。終盤、ある一つの要素によって複数の状況が説明されるものの、そもそも現実にはない設定がいくつも絡んでいるので、わざわざ作り込んだ印象が強く、「なるほど」と思える納得感がない。前振りもよわいので、唐突さも否めない。 ソウヤーは、どうもプロット構築があまり得意ではないのかもしれない。 |
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| No.312 | 5点 | パスコーの幽霊- レジナルド・ヒル | 2026/03/29 16:14 |
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| Wikiによると発行年は1979年で、ダルジール・シリーズの5作目と6作目の間に発表されている。かなり初期の短編集だ。
本作に収録されている「パスコーの幽霊」と「ダルジールの幽霊」は、別の短編集「ダルジール警視と四つの謎」にも収められていて、しかも表題作「パスコーの幽霊」がほぼ半分を占めている。そのため、「ダルジール警視と四つの謎」を既読だと、未読部分が少なくてやや物足りない。 上記2作以外の残る5作は、どれもよくまとまった短編なのだが、必読といったものではない。以下、5作の寸感を。 「屋根裏のトランク」 「屋根裏のトランクから、ある想像が浮かんで……」という話。短編の見本のような話。 「リオデジャネイロの講演」 タイトル通り、ある講演を最初から最後まで描くという、書き方に凝った話。なかなか皮肉な味わいはヒルらしい。 「女権拡張論者の災難」 1979年当時はまだ一般的でなかった「ストーカー」という存在が登場する。サスペンスたっぷりで5作ではベスト。 「スノウボール」 解説によるとスノウボールは、日本語と同じように「雪だるま式に増える」という比喩に使われるとのことで、本作ではいろんな出来事が次々と転がる。「転がった先に……」といった話。どこか落語的な味わいがある。 「救出経路」 これも書き方に凝った話。タイトルから想像できるように、あるところに捕まった人の話。乙一のいくつかの話を思い出した。 |
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| No.311 | 5点 | ひらけ!勝鬨橋- 島田荘司 | 2026/03/29 15:45 |
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| 「屋上の道化たち」を読んだ勢いで、未読だった島田荘司のユーモア物を、つづけて読んでみることにした。
シチュエーション・コメディのつもりなのだろうが、老人の描き方がテンプレすぎるし、その状況も悲壮感が漂い、あまりコミカルに感じられない。悪役も型通りで魅力はないし、ぶつかる困難も目をひくものではないので、おすすめ点があまりない。 とはいえ、リーダビリティは高いので、移動時間などの空き時間にちょっと読む分には適当かな。そういう意味では、当時のノベルス向けとしては、需要を捉えた作品だったと思う。 あとは、いくつか気になった点を書いておこう。悪役が型通りだから気にならないが、終盤の主人公たちはやり過ぎ。悪役よりひどいことをしていないか? 島田荘司の作品中で、若い女性キャラが会話の語尾を伸ばすのは、本作が最初かもしれない。こんな初期からこの文体を使っていたのは、ちょっと意外だった。 |
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| No.310 | 5点 | 屋上の道化たち- 島田荘司 | 2026/03/29 15:23 |
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| 本作、銀行のシーンはシチュエーション・コメディのようにも見えるし、会話のテンポは漫才のようだ。明らかにコメディ・タッチを狙っているので、タイトルは、シンプルな「屋上」よりも、元の「屋上の道化たち」のほうが、どこかとぼけた感じがあってふさわしいと思う。
前半の複数視点で物語を進める構成は、場面の切り方や順番が実に巧みで、会話がやや冗長に感じられる部分があっても、「いったい何が起きているのか?」が気になり、グイグイ読ませる。流石、島田荘司。 後半、御手洗が関わってきて、あるものが出てくるところなども、少し不条理感があり、なかなかなよいのだが、ああ、駄目なのは真相。偶然の重なり合いだけなら私は許容できるが、「物理的に完全に無理なのはどうなの?」と思う。 真相に期待せず、島田荘司のやや独特なユーモアと、いろいろなものを入れ込んだような島田節のプロットを楽しむのが、吉でしょう。 |
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| No.309 | 5点 | 消滅世界- 村田沙耶香 | 2026/03/12 01:48 |
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| 村田沙耶香を読むのは3作目だが、共通した味わいがある。それは、”現実と少し違う世界を描き、「この世界もありなのかも?」と感じさせ、現実が代替できる可能性を示して、価値観を揺さぶる”ことだ。
今回は、真正面から性関係をとりあげ、恋人、夫婦、親子のあり方を問いかける。いま「そういうものだ」と思っている関係性が、ただの思いこみなのではないかと考えさせる。現実の皮を一枚だけ剥いだような、不穏で、でもどこか魅力的な世界観。 いやいや、まだまだ他の作品を読む気にさせてくれるなあ。近作はベストセラーにもなってるし、読んでみなくては。 ジャンルとしては、SF or ファンタジー or ホラーかな。ミステリとはいえない。ただ、早川の異色作家短編集風の味わいはあるので、その手の作が好きならば、楽しめるかも。 そういえば、本作は映画化したのだった。配信で見れたら、見てみよう。 |
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| No.308 | 9点 | 黄色い部屋の謎- ガストン・ルルー | 2026/03/12 00:03 |
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| 本作は10代の頃に読んで、滅法面白かった。当時はまだミステリ初心者だったので、この手のトリックの知識がなく、すっかり騙された。特に第2の事件は完全にミスリードされて、唖然とした。幸せな時代だった。
再読してみて驚いたのは、第2の事件をミスリードされた理由が、主人公の事件解明ですっかり説明されていることだった。これは、作者が「こうやって読者を騙そうとしましたよ」と、手の内を説明していると読めて、なかなか面白かった。 いや、やっぱり本作はいいなぁ。少年時代のワクワク感を思い出させてくれる。評価は、思い出補正抜きで、この点数。 「いやいや、いま読めば、それほどではないでしょ」という意見があるのは理解できるが、私の評価基準は「先行作に評価をふりかえる」なので、先見性を高く評価したい。 本作の発表は1907年。同時代の作を上げると、「空き家の冒険」でホームズが復活したのが1903年、ソーンダイクの初長編「赤い母指紋」が1907年、「ブラウン神父の童心」が1911年など。短編全盛の時代に、ここまで構築感のある長編をつくった(後続の作家が参考にしたであろう)ことををまず評価したい。長編を通して、不可能性を押し出してストーリーをドライブしたのも、本作が最初期の例だろう。 また、手がかりの提示が巧みで、黄金時代を先取りしている点も評価ポイントだ。黄金時代の作品は、絶対「本作のやり方を学習した結果」だと思う。具体的には、創元推理文庫「黒衣婦人の香り」の解説がじつによく説明しているので、多くの人にぜひ読んでほしい。 文章表現や展開が古くさいというのは、発表年を考えると当然で、マイナスポイントにはならない。(そこが駄目だという人は、そもそもこの時代のミステリ全部が駄目だと思うのだが、いろいろなところで、けっこうその辺が批判的に語られていて、本作ファンとしては残念だ) まあでも、現代のミステリをたくさん読んだ人が「いま驚けるか?」と言われれば、そんなことはなく、世評が低くなってしまうのは仕方ないよな。でもでも、こっちが先で、これを参考にして今のミステリがあるんだよと、強く強く推しておきたい。 |
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| No.307 | 7点 | 靴に棲む老婆- エラリイ・クイーン | 2026/01/19 01:55 |
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| 新訳版で再読。
なかなか良いところと悪いところが混在した読後感だった。 まず悪いところから書くと、世界設定になじめなかった。靴の屋敷や、すこしおかしな3兄弟の存在にはリアリティが乏しく、かといって別世界として十分に構築されているところまて達していないので、なんとも中途半端だ。さらに最初の事件では、「xxと知らなかったとしても、これはその場で逮捕でしょ?」という違和感がぬぐえず、半ばまでは作品に入れなった。 かわって良いところは、後半の手がかり提示と解決の展開で、何度もひねりがあり、かなり盛り上がる。銃を撃ったなどの、犯人の行動のいくつかは釈然としないが、それを差し引いても、クイーン作品の解決の展開で、上位にくる面白さだ。 採点は、良いところと悪いところ鑑みてこの点で。 あと、世界設定の違和感から、他のクイーン作品はどうだったかを考えてみたら、ちょっと面白いなと感じた。 クイーンはデビュー作から「劇場」を事件の舞台に選ぶなど、設定には結構凝る方だか、全作を概観すると、その舞台設定はいくつかの方向に分類できそうだ。 まず最も多いのは、ニューヨークを中心とした都市型の舞台だ。大勢が出入りする「劇場」「百貨店」「病院」などを舞台にした作品や、都市内部を移動しながら展開する物語がこれに含まれる。次に、地方都市を舞台にした作品群がある。「ライツヴィル」や「ハリウッド」など、ニューヨークよりも人間関係が濃密な環境を背景に物語がすすむタイプだ。そして、これらをより閉じた空間に収めた「クローズド・サークル」型の舞台も少なくない。特定の屋敷などを中心に展開するもので、「シャム」「スペイン」「最後の一撃」など、挙げてみると直感的な印象よりも多い。そして最後に、異世界的な設定に踏み込んだ作品がある。「帝王死す」や「第八の日」がその典型だ。 本作は、特定の屋敷設定と異世界設定のグラデーションで、だからなのか、世界設定を受け入れるところがスムーズにいかなかったのかもしれない。 |
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| No.306 | 5点 | シェイクスピアの誘拐- 笹沢左保 | 2026/01/04 00:13 |
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| リーダビリティは安定していて飽きさせない。ひとつひとつがすぐに読めるため、すきま時間に読むには最適だが、読み応えに欠けるぶん印象に残りにくい。有栖川セレクションでは最初の短編集だが、もしこれが最優秀作という位置づけなら、以降を積極的に読み進めたいとはあまり思えないかな。 | |||
| No.305 | 5点 | スミルノ博士の日記- S・A・ドゥーセ | 2026/01/04 00:12 |
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| もちろん、あの有名作との関連で読んでみた。
あの趣向は単なるネタの一つ程度だろうと想像していたのだが、実際には作品の根幹としてしっかり組み込まれていた。これは先行作として大いに評価したい。 ただ、1917年の作品にしては雰囲気がホームズ時代の諸作に近く、黄金時代の作品と比べるとやや古めかしく、物語運びもどこか行き当たりばったりに見える部分がある。現在に単独で読むには、魅力にかけるかなと感じる。 |
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