home

ミステリの祭典

login
発信人は死者
十津川警部シリーズ

作家 西村京太郎
出版日1982年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 斎藤警部
(2016/02/16 12:28登録)
先の大戦で撃沈された艦船からのSOSを定期受信せり!! まさかオカルト小説の筈は無いよなと京さんを信頼しつつ、往時の海軍将校謎の死も絡み臨場感たっぷりの南洋冒険譚を堪能し終わると。。そこには意外性の薄い結末が待っていた。だが決して詰まらなくない。本作はやはり、謎と因縁多めの冒険小説と思って行くのがイカした読み方でしょう。海洋期京太郎なら「消えたタンカー」等に較べて確かに謎・冒険の双方からの圧倒的迫力を誇ると言った風情ではないが、かと言って熱心なファン向けの小粒作品とは言えません、まだ広く読まれて然るべきと思います。(でもやっぱ「タンカー」を先にトライして欲しいなあ、その余韻のうちに本作に来るとすごくいいよ)

No.1 7点 E-BANKER
(2015/11/01 16:55登録)
1977年発表の長編。
まだ若き十津川警部が登場する作者初期の作品。
徳間文庫の復刻版にて読了。

~アマチュア無線を楽しむカメラマン野口浩介の無線機に午前二時になると決まって弱々しい救難信号が送られてきた。調査の結果、南太平洋のトラック諸島で沈没した潜水艦・伊号五○九から発信されたものだったのだ! そして元海軍中佐の不可解な死!? この艦が積んでいた十億円の金塊の行方は? 真相を追って野口は南の島へ向かったのだが・・・。十津川警部シリーズの初期代表作~

前々から読もう読もうとしていた作者の初期作品のひとつ。
初期作品には「消えたタンカー」や「赤い帆船」など“海”をテーマにしたものが多いが、本作もやはり「海」テーマの作品。
太平洋戦争の秘密という大きな歴史の謎を絡めて、壮大なスケールの長編に仕上げている。

紹介文のとおり十津川警部シリーズは間違いないのだが、本作で彼はあくまでも脇役。
主役は虚無的で世間に対して斜に構えた青年・野口と二人の仲間であり、何に対しても熱中できなかった彼が、徐々に金塊の謎と魅力に取り憑かれていく様子が実によく描かれている。
悲しげでありながら、微かに希望の光が見えるラストシーンも実に映像的で良い。

伊号潜水艦と殺人事件に纏わる謎については中盤を過ぎるあたりでほぼ判明する。
提示された謎が大掛かりだっただけにやや呆気ないのだが、本作はいわゆる謎解き主題の本格ミステリーではない。
サスペンスフルな終盤~ラストへ繋げていくストーリーテリングこそが本作の白眉だろう。
どこかノスタルジックな気分に浸れるはず・・・

今までも書いてきたけど、トラベルミステリーを書く前の作者初期作品のレベルは高い。
本作もそれなりに高い評価をして良いのではないかと思わせる・・・そんな作品。
(あまり古さを感じさせないのもGood!)

2レコード表示中です 書評