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ミステリの祭典

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ネロ・ウルフの事件簿 ようこそ、死のパーティへ
ネロ・ウルフ、中編集

作家 レックス・スタウト
出版日2015年10月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 kanamori
(2016/01/04 18:35登録)
巨漢の美食探偵ネロ・ウルフ登場の中編集。『黒い蘭』につづく論創海外ミステリ叢書の第2弾で、今回も各話100ページ前後の中篇が3作品収録されています。

グルメ目的と蘭の展覧会以外は原則外出しないというシリーズのお約束どおり、ウルフは終始安楽椅子探偵で、もっぱら語り手の”ぼく”こと助手のアーチーが探偵活動を行うという、3作品ともこのシリーズでは非常にスタンダードなプロットといえます。また、いずれも容疑者を5~6人に限定したフーダニットになっており、終盤に関係者一同をウルフの探偵事務所に集めて犯人を指摘するという構成も同じです。それでも読んでいてマンネリを感じないのは、アーチーのウィットに富む一人語りや、ウルフとの掛け合いが毎回愉快なのと、容疑者たちの人物造形が上手く(とくにスタウトは、存在感のある魅力的な女性を描くのが巧い)、彼らとの駆け引きにコンゲーム的な面白さがあるからでしょう。
収録作のなかでは、現場にあったはずの拳銃が消えたり現れたりする「翼の生えた銃」が個人的ベスト、犯人特定のロジックにキレがあります。哀切な余韻を残すラストシーンが印象的な表題作も捨てがたい。

No.1 6点 nukkam
(2015/11/16 00:30登録)
(ネタバレなしです) ネロ・ウルフシリーズの「黒い蘭」と「ようこそ、死のパーティーへ」の2つの中編を一つに収めた第一中編集「黒い蘭」(1942年)を、論創社版はそれぞれ他の中編と組み合わせた独自編集で二巻に分けました。「ようこそ、死のパーティーへ」とセットにされたのは第五中編集(1951年)の「翼の生えた銃」と第六中編集(1952年)の「『ダズル・ダン』殺人事件」です。三作品とも本格派推理小説としてしっかり作られていますが、特に切れ味鋭い推理が印象的な「翼の生えた銃」と七つの手掛かりから犯人を追い詰める「『ダズル・ダン』殺人事件」はなかなかの出来栄えです。それにしても鉄面皮のイメージのあるウルフが結構怒ったりどなったりしているのには驚きました。なお「『ダズル・ダン』殺人事件」は1951年に米国で最初に出版された時の原題が「See No Evil」、第六中編集では「The Squirt and the Monkey」に改題、更に後に「The Dazzle Dan Murder Case」へと改題され、日本でも以前に「ヒーローは死んだ」という題で翻訳紹介されていたというややこしい経歴を持つ作品です。

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