home

ミステリの祭典

login
やさしい死神

作家 フレドリック・ブラウン
出版日1961年01月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2018/09/26 17:14登録)
(ネタバレなし)
 メキシコに近いアリゾナ州ツーソンの町。その年の四月、初老で独身の不動産業関係者ジョン・メドリーの自宅の庭の木に、中年男の死体が寄りかかっていた。メドリーは隣人のアームストロング夫人の電話を借りて警察に通報。メキシコ系の青年刑事フランク・ラモスとその相棒で「レッド」こと赤毛のファーン・ケイハン刑事がやってくる。やがて後頭部を銃で撃たれた死体は、しばらく前に妻子を事故で失ったユダヤ系の移民カート・スチフラーと判明。殺人か? それとも人生に諦観したスチフラーが何らかの事情で無理な姿勢で後頭部を撃ち、その後拳銃がどこかに行ったのか? と可能性がとりざたされるが、ラモスは捜査を進めるなかである疑惑を抱いた。

 1956年のアメリカ作品。もともと評者は良くも悪くもフレドリック・ブラウンのミステリに対し、ホームランや大ヒット作品は期待していない。なんかキラリと光ったり、どっか心に残るものがあればいいなあ、という感じだが、そういう意味でスキな思い出の作品はいくつかある。まあそういうのって、読み返してみたら評価がずいぶんと変わっちゃう可能性も大きいんだけれど。
 本作もミステリとしての大ネタは(中略)バレバレなんだけど、小説としての狙い所はなんとなく分かるような気がして嫌いにはなれない。最後まで読むと察せられるけれど、実はこれは30男が苦い現実のなかで成長する青春小説なのである。あんまり詳しくはいえんが。そのためにミステリとしてのギミックも、当該人物が向かい合うもうひとつのドラマも機能する。なお本作のラストは今おっさんになって読んでもちょっとしみじみしたけれど、若い内に手に取っていたらもっともっと心に染みたかもしれない。これから本書を紐解く人がいい人生のタイミングで出合うことを願う。
 でもって本当は6点くらいあげてもいいんだけど、さすがに前半(あえて曖昧に言います)のあの大嘘の描写はないでしょ(汗)。私ゃあんまりしれっと書いてあるもんだから、これは確信行為で何か大技を仕掛けてくるのかと思ったよ。ここまでブラウンがミステリとしての禁則事項に無頓着とは思わなかった。苦笑しながらそれでもどっか憎めず、この評点。

No.1 4点 ボナンザ
(2015/10/12 19:47登録)
近年ではブラウンの長編はほとんど見かけないが、この出来では仕方ないかとも思ってしまう。

2レコード表示中です 書評