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ミステリの祭典

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断崖

作家 スタンリイ・エリン
出版日1958年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 クリスティ再読
(2025/06/03 08:24登録)
エリンの処女長編。都筑道夫の解説によると、例の短編「特別料理」とほぼ同時にお目見えした本だそうだ。だからエリンでも最初期ということになる。

それもあるのか、本質的には短編だと思う。実際ポケミス140ページほど。図体だけは大きい16歳の少年が、父親を辱められたことに憤り、仕返しのために拳銃を持って夜の街をさまよう話。その中でオトナとしての経験を一夜にして積んでいく。酒場で初めて飲んだウィスキー(父の酒場で育ったクセに今までビールしか飲ませてもらってないw)、ボクシング会場で知り合った大学教授と一緒に行ったナイトクラブ、そして娼家...とオトナ初体験と仕返しターゲットの追跡がないまぜになってページを持たせている。

だから大人たちの世界に急に放り出された少年が「子どもな反応」をしているあたりが読みどころ。アタタ、イタいぜ。

No.1 7点
(2025/03/15 14:25登録)
エリンの長編第1作は、父親を辱めた男を殺そうと決意した16歳の少年ジョージの一人称形式物語です。ポケミスで約140ページ(文庫本なら200ページ弱)の短い作品ですが、作中の経過時間も短く、たった一晩の出来事です。
実際の断崖(『ゼロの焦点』ラストのような)が出て来るわけではありません。原題は "Dreadful Summit"、冒頭に『ハムレット』のホレーショーの「(わが君を)恐ろしき断崖の絶頂にみちびこうとして…」というセリフが引用されています。
話の転がっていき方は、ほとんどコメディと言ってもいいくらいのとんでもなさなのですが、ジョージの必死な思いが、作品をシリアスな雰囲気にとどめています。彼が特に背が高いこと、また彼の父親が酒場の経営者であることが、重要な意味を持っている点も、うまく考えられています。そして訪れる衝撃的な結末…これはさすがエリンという感じでした。

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