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ミステリの祭典

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ぼくは明日、昨日のきみとデートする

作家 七月隆文
出版日2014年08月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 5点 メルカトル
(2015/08/22 21:33登録)
ストーリーとしてはごく普通の恋愛小説で、特筆すべき点はない。だが、大胆なSF的仕掛けにより、読者を日常と非日常の狭間に追い込み、これまで体験したことのない世界に誘う。
情感あふれる文体と上品な文章は私好みではあるし、色んな意味で良質の恋愛小説と言えよう。ジャンルとしてはミステリではないと思う。ファンタジー寄りの恋愛小説ってところじゃないだろうか。まあ『イニシエーション・ラブ』が堂々と本格ミステリとして登録されているのだから、本作がひっそりとここにいても悪くはないのかもしれない。
でも、涙腺の緩い私だが、これは泣けなかったなー。もっと泣かせてくれてもいいような内容だっただけに、やや物足りなかった。と言うか、ちょっと薄味すぎて刺激が足りない気がした。

No.1 7点 斎藤警部
(2015/08/14 10:40登録)
「イニシエーション・ラヴ」を読んで恋愛はもう嫌気が差したと言うあなたに(そんな人がもしいれば)、本作を強く薦めます。
こちらは本当に綺麗な物語。嫌らしい裏切りなどありません。その代わり、世にも哀しく美しく、頭がぼーっとするほど(過去と未来の両方に向けて)ノスタルジックな、全く別種の反転が待ち受けています。。

(ここよりネタバレ気味)

こ、これはまさかの読まずの出落ち(題名ネタばらし)。。。。 と見せかけて実は何か別なこと企んでるんじゃないかな。。。 と思って読んでみたら本当に題名そのものの内容! でもがっかり感はまるでありません。 現実感の薄いSFファンタジーと現実的な幼く美しいラヴストーリーを交差させ、前者に内在する軽めのセンス・オヴ・ワンダーが後者の哀切極まりないまさかの展開に後ろから眩しい光をこっそり当てていると言った構造。 SFミステリ的大ネタは飽くまで物語を引き立てる魔法の薬でした。

ところでこの小説、なんと、ちょうど半分行ったあたりでそのSFミステリ的大ネタをあっさりばらしてしまいます。 ということは、更にもう一つの反転が最後に待ち受けているんだな。。とミステリ読みは思ってしまいますがさにあらず、後半は「ではどうしてその『大ネタ』がそんなに哀しい事なのか」の核心を突くために費やされます。 その合間合間に、美しい純愛風景をはさみながら。。 否、その日常の風景こそが哀しみの核心だったのですね。。

帯の煽り文句の様に電車内で号泣はしませんでしたが、流石に目頭が熱くなりました。 切ないから、哀しいからというよりむしろ、前述の、過去と未来両方への遠い遠いノスタルジー、こいつが後半途中から徐々に徐々にグゥ~~~ンと迫って来やがってね。

ラストシーン、いい。

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