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ミステリの祭典

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アリシア故郷に帰る
サニット警部シリーズ

作家 ドロシー・シンプソン
出版日1987年04月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 tider-tiger
(2019/04/18 00:35登録)
~美しく活発で人気者だったアリシア――俗にいうリア充たちのグループに所属――が二十年ぶりに故郷の土を踏む。だが、彼女は旧友の演奏会を観賞後に宿泊していたホテルで殺害されてしまった。彼女の過去になにか因縁があるのか、あるいは現在の問題なのか。~

1985年イギリス作品。サニット警部とラインハム刑事部長による地道な捜査が淡々と続き、真相に肉薄したかと思いきや遠ざかってとそんなことが繰り返される。サニット警部は腰に持病を抱えており、どうやら以前の作品でなにかあったのだと思われるが、なにがあったのかさっぱりわからないのがもどかしい。
1985年の作というわりにはいささか古めかしさを感じさせる。読み易いが没個性的な文章、必要充分だがそれ以上の膨らみはない人物描写、手堅いが際立った良さもあまり感じられない。外連味ももちろんない。
一つの殺人事件を一つ一つの仮説を潰しながら追っていき、作品のトーンは最後までほとんど変わらずに貫かれる。
警部と刑事部長のコンビがいわゆる善玉悪玉でもなく、ホームズワトスンでもなく、二人そろって性根の優しいごく普通の警察官というのがまた本作をさらに地味な存在にしていく。
真相は悲劇には違いないのだけど、みんなそれぞれ頑張ったんだなと納得できる。可哀想なんだけど読後感は悪くない。
これといった特色はないんだけど、これってある意味では個性的な作品というか、読後に脳内を残り香が漂う。

妙な感想になってしまいました。この作品は好きです。
なにがいいのか説明しづらいのですが、私もこの人の他の作品を読んでみたいです。
ミステリとしては6点ですが、ちょっと甘めで7点つけます。

No.1 6点 nukkam
(2015/08/14 09:37登録)
(ネタバレなしです) 英国のドロシー・シンプソン(1933年生まれ)はクリスティーの伝統を継ぐ本格派推理小説の書き手のようです。1985年発表のサニット警部シリーズ第5作の本書を読むと、なるほど強い個性は感じられませんが英国の本格派らしい作品でした。事件の悲劇性描写はクリスティー作品にはほとんど見られないものですが、最後にはサニット警部の家庭団欒シーンを挿入してあまり陰鬱にならないようにしています。人によっては悲劇は最後まで悲劇らしくすべしという意見もあるでしょうが救いのない結末でも明るさを失わないこの作風は個人的に結構好きです。もっとこの人の作品を読みたいのですが、あの森英俊編著の「世界ミステリ作家事典[本格派編]」(1988年)の250人の作家にも選ばれなかったぐらいなので今後翻訳される可能性は限りなく低いんでしょうね。ああ、英語原書を読める力のない自分が恨めしい。

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