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ミステリの祭典

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友だち殺し
タック警部補シリーズ

作家 ラング・ルイス
出版日2015年07月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 mini
(2016/10/19 11:17登録)
* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、番外編その第2弾、昨年2015年度の生誕100周年作家を2名ほど落穂拾いの2人目
実は昨年後半は私生活的に多忙だったのであまり読書冊数をこなせなかったのも理由なのだけれど、昨年の生誕100周年作家が豊作な年回りだったので予定数を拾いきれなかった事情も有るのだよね
そこで補遺ということで、2作ほど遅ればせながら今年に書評しようと思うわけ、今年は昨年より読書時間が取れるのと、何と言っても大物作家が多くて豊作だった昨年に比べると、今年の生誕100周年作家は平年並みで予定していた作家は現在全て読了しているので余裕が出来たわけね
本来なら昨年読む予定で今年にずれ込んだ2名を昨年度の拾遺として今年に書評します、第2弾はラング・ルイス

ラング・ルイスは別名義のサスペンス小説1作を含めてもたった6作しか残さなかったが、マイナー作家扱いなのが惜しいほど魅力にあふれた作風である
大男のタック警部補シリーズは全5作でその内最終作だけは50年代になって発表されたが、デビューから4作目まではほぼ戦中作家と言っていいい時期に書かれており、やはり作品数だけじゃなくて活躍時期のタイミングの悪さもメジャーになれなかった一因な気がする
何年か前に代表作と言っていい「死のバースデイ」が論創社から出た後、他の作品も続けて出ます的な文が解説に有ったのだが、結局昨年になるまで音沙汰無し
まぁ派手な作風でも無いし、読者側の要望も無かったのかねえ
大体ねえ昨今の読者はというと、やれ密室だの不可能犯罪系だの、その手の作家ばかり出版社に要望するからねえ、最近はそうでもないが4~5年前は海外古典の発掘と言えばそうした風潮が有ったんだよね
それが昨年久々にラング・ルイスのデビュー作が同じ論創社から翻訳刊行されたんだよね、昨年が生誕100周年だったのに合わせたんですかね
私の方も私生活的事情で昨年後半が多忙だったので今年にずれ込んじゃったけどね、やはりこの作者は読んでおきたかったしね
「死のバースデイ」でも思ったのだがこの作者、決して派手ではないけど華やかでカラフル
色彩感覚溢れた視覚的イメージの作風が魅力なわけだけど、父親が画家兼漫画家という事で納得、成程血筋なんだろうね、本人自身も大学は芸術分野専攻だったようだ
このデビュー作でもそれは感じられ、さらに部下との粋な会話の応酬もユーモアに溢れて魅力的、特に「死のバースデイ」には登場していなかったおとり役の女性警察官とのやりとりなどはこの作ならではだ
一方で謎解き要素では、解説にもあるが被害者の性格が重要な鍵を握っているという共通性もある、この被害者の性格に照明を当てるのは作者の謎解き面での持ち味なのだろう
ただ舞台設定がカレッジミステリなせいか、「死のバースデイ」に比べるとこの作者にしてはやや華やかさに欠ける印象が有って、「死のバースデイ」に比較するとちょっと落ちるかなぁ
やはり「死のバースデイ」は傑作だったんだなとあらためて思った

No.2 6点 kanamori
(2015/08/22 22:34登録)
ロサンジェルスにある母校の医学部で学部長の秘書に採用されたケイトは、かつての恋人で医学部生のジョニーに再会する。彼の案内で校舎を見て回っていたケイトは、死体処置室で若い女性の死体を発見、それは行方不明になっていた前任の秘書ガーネットの遺体だった---------。

数年前に「死のバースデイ」の邦訳があるタック警部補シリーズの第1作。
原題は”Murder among Friends"となっていて、大学の医学生を中心に被害者女性の周辺人物を限られた容疑者とするカレッジ・ミステリになっています。
ヒロインのケイトの視点で友人たちの人物造形を浮き彫りにしつつ、タック警部補を中心とする捜査で、被害者の死に至る状況、動機、アリバイ調べを交互に描写する構成が効果的で、小気味いい展開が読みやすいです。ただ、途中の二度のサスペンス部分は無理やり入れ込んだような感じを受けますが。
部下の女性刑事ブリジットの鋭い仮説や、終盤にはタックによる事実関係と疑問点の整理、一覧分析が挿入されるなど、徐々に真相に迫っていく推理過程に関しては「死のバースデイ」より充実しているように思いました。
最後に明かされる真相は、かなり後味が悪く個人的には若干疑問点もあるのですが、仄かに希望が持てる未来も示唆されているのが救いです。

No.1 6点 nukkam
(2015/08/20 09:05登録)
(ネタバレなしです) ミステリー作家としては1940年代から50年代にかけて発表したタック警部補シリーズ5作と別名義で発表したサスペンス小説1作のみの米国の女性作家ラング・ルイス(1915-2003)による1942年発表のデビュー作である本格派推理小説です。単調になりがちなプロットですが、10章や19章でサスペンスを高める出来事を起こして引き締めています。もっともこれらの出来事はかなり肩透かし的な真相であったことに驚かされますが。メインの事件の方はアリバイ調査に毒の入手経路調査、そして動機の調査と地味ながらしっかりした謎解きです。推理は人物分析に頼っている部分が多いのですが、23章でのタックの疑問点に符合させて説得力を高めています。しかも一件落着と思わせてさらにもう一ひねりするなど芸が細かいです。

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