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ミステリの祭典

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殺意の絆
南郷弁護士シリーズ 旧題「ふざけるな」

作家 島田一男
出版日1970年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 4点 nukkam
(2018/04/07 22:26登録)
(ネタバレなしです) 8冊の長編と1冊の短編集が発表された南郷弁護士シリーズの最後の長編として「去来氏曰く」(後に「夜の指揮者」に改題」)(1960年)から大分間を開けて1970年に出版されました。このシリーズには「上を見るな」(1955年)や「その灯を消すな」(1957年)といった命令形のタイトルが印象的な作品がありますが、本書も発表時には「ふざけるな」という唖然とするようなタイトルでした。そのタイトルに見合った内容かというと微妙なのですが。光文社文庫版の巻末解説(家系図が親切です)で「軽佻な風俗性を背景にしている」と評価しているように(用語が時代の古さを感じさせますが)フーテン、ゲバルト学生、アングラ喫茶、(直接的な摂取描写はないものの)阿片、大麻、シンナーが登場し、高級人形制作の名門一族を登場させながらその当主(9代目)が後継者候補のフリーセックスを容認しているという乱れた人間関係です。本格派推理小説ではありますが通俗色があまりにも濃いのは好き嫌いが分かれそうです。締め括りはシリアスかつ重苦しく終わらせていますが。

No.1 6点 斎藤警部
(2015/06/19 11:04登録)
やっぱり夏は島田一男だナ! シマイチは短篇が一番と思ってたけどさ、長い中篇みたいな長篇のこれも悪くないぜ。 東野圭吾「新参者」と同じ人形町を舞台とした、老舗の人形屋一族を急襲する人形に因んだ”見立て”連続殺人だ。弁護士と刑事、そこに弁護士助手も絡んで粋なやり取りは変わらずの味。ビートルズ解散から間もない頃の(軟派な不良の)若者風俗が痛ましくも郷愁を誘う。真犯人は最初の方で睨んだ奴だったけど、途中で結構迷った。熟達のミスディレクションは本当に狡猾(ズル)いね。 一見チャラいが、脂の乗った手堅い本格推理だよ。

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