home

ミステリの祭典

login
淵の王

作家 舞城王太郎
出版日2015年05月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 モグラの対義語はモゲラ
(2022/03/14 18:13登録)
読んだのは単行本版。
所謂エンタメ小説として見た場合の、ジャンルが全く分からなかった。この人の本だと毎度のことなのだが。一応ホラーミステリーと言う事でいいのだろうか?
何者か分からない恐らく生き物ではない何かによる二人称視点で話が進み、同様に何かわからない闇とそれが食い合ったりしている……ということでいいんだろうか?
その語り手の視点が「愛」、作中で異常な現象を起こしたりその「愛」を食ったりしている存在が、なんだろ? 「恐怖」とか「呪い」とかそういう奴なのだろうか……。何かの暗喩だと思ったのだが、何だと考えるとスッキリするのか分からない。
とりあえずちゃんと読めていないのは間違いなさそう。とはいえ楽しめて読めたので悪くなかった。特に第三章はよく分からないホラーなりに理論と推理が存在しており、第一章も身近にありそうな社会問題の描写に多少リアリティが感じられて程よく怖かった。第二章も青春物として自分は楽しめた。

考察してる方のページとか見てみると、なるほど後章の主人公という可能性があるのか。むしろ読み終わってから色々考える方が楽しめそうな作品っぽそう。

No.1 5点 メルカトル
(2018/01/03 23:25登録)
『中島さおり』『堀江果歩』『中村悟堂』の三篇からなる長編ホラーということに一応なっていますが、それぞれ全く別のお話です。共通点は、語り手が人間ならざる目に見えない存在であること、そして最後は主人公が同じ末路を辿ることです。ただそれだけで長編というのはおかしいのではと思いますが、連作短編集ともまた違うので、そう呼称するしかないようですね。
第一話は男女のいざこざが描かれていますが、これは正直評価すれば3点どまりかなと思いました。第二話ではある女性の漫画家になるまでの過程と、彼女の描く漫画に現れた怪異が中心となっており、ここでやっとキャラの良さとストーリーの面白さで盛り返します。第三話はようやく本番という感じで、これを描くために前二話があったんだなと思います。
空中に浮かぶ闇の入り口、そして「真っ暗坊主」。そこに全てが収斂します。こんなことを書いても想像できないと思いますが、読んでみなければ分からない異様な世界観がラストで広がります。とは言え、文章が淡々としているため今一つクライマックスって感じがしないんですよね。本作はどうやら最強ホラーと喧伝されているようですが、作者の本領が発揮されていないせいか、それとも元来文章が上手くないためなのか、個人的にはあまり心に響いてくるものがありませんでした。

根底にあるのはやはり愛なんでしょう、これが舞城流の愛情表現だったのかもしれませんね。

2レコード表示中です 書評