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ミステリの祭典

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キングレオの冒険

作家 円居挽
出版日2015年06月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 505
(2015/11/04 13:02登録)
超一流と一流半の組み合わせが楽しい探偵物語。ホームズパスティーシュ作品であるが、〝ワトソン役〟の味わいはこの作風ならではの妙があり、正典をなぞるだけでは生まれない。〝ワトソン役〟が、探偵の〝よき理解者〟でもあり〝有能な助手〟として描かれているために、ホームズ任せで事件が進んでいく訳ではない部分がオリジナルティとしてある。

また、作者の円居挽を代表する『ルヴォワール・シリーズ』に登場する人物が出演していたりと、スターシステムを採用することで円居ファンは楽しみが尽きない設計となっている。
連作短編ミステリであるが、ホームズ的ミステリである。正典を彷彿とさせる観察眼をもって気づきの天才の探偵の活躍を追うストーリーがメイン。謎の解明も比較的あっさりとしたもので、それが後々と伏線になっていくという構成。記述におけるフェアプレーや作者特有の〝どんでん返しの連続〟が『ルヴォワール・シリーズ』を彷彿とさせ、円居作品を読んでいるという印象を常に抱かせる力強さがある。

最後にある『悩虚堂の偏屈家』は、まさに作者の良さが出ている。『名探偵VS名探偵』といったエネルギッシュな展開をあの手この手で盛り上げようとするドタバタ感が楽しい。無実の妖しい容疑者の潔白を晴らすというシンプルな構図に、〝裏返しのレインコート〟や〝仕掛けのある犯行現場〟と一見捻られている謎に対して、鮮やかな気づきからシンプルに運ぶ様は痛快的。
探偵バトルであるがゆえに、推理と推理をぶつけて互いの推理の盲点を突き否定していく。その過程で作者らしい爆発力が組み込まれており、スムーズのなかに起伏がある。
トリックも短いなかに〝これでもか〟といった貪欲なエンタメ精神があり、サービス性が旺盛。どうやらシリーズ化する運びになりそうな終わり方であるが、BL風味はこのまま継続なのかどうか。そこが最大の謎であるかもしれない

No.1 6点 kanamori
(2015/08/02 11:34登録)
京都の日本探偵公社に所属する超人探偵、”キングレオ”こと天親獅子丸と、従兄弟で推理作家志望の助手・大河のコンビが、”現代の悪”が仕掛けた謎とトリックに挑む連作ミステリ。

コミック雑誌を思わせる紙質と装丁で、手を出すのを躊躇わせるかもしれませんが、(内容的にもそういうノリが感じられなくはないものの)意外とまともなパズラー連作でもあるので、安心してお買い求めくださいw 
「赤髪連盟」「踊る人形」「まだらの紐」など、各編いずれもシャーロック・ホームズ譚をモチーフに、それらを擬える事件になっているのが面白く、”正典”を読んでいればより面白さが増すと思います。
助手・大河のミステリ小説新人賞応募と違法賭博のからくりが繋がる「赤影連盟」、麻薬取引の意外な暗号手法が独創的な「踊る人魚」、正典というよりカーター・ディクスンのある作品の変奏曲のような「なんたらの紐」など、トリックと伏線の妙でそれなりに楽しめました。
個人的ベストは、大河の妹の恋人・城坂論語の殺人容疑を巡って、伝説の老探偵と対決する中編の最終話。
ルヴォワール・シリーズの作者らしい読み応えのある推理バトルがなかなか圧巻です。

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