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ミステリの祭典

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浅草偏奇館の殺人

作家 西村京太郎
出版日1996年02月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 斎藤警部
(2017/02/11 16:09登録)
犯人はかなり見え透いてましょうがね。。。。雰囲気で押し切られちまいまさぁね。古い浅草。。。京太郎さんの内に秘めた暗い情念が最善の方向に勢いよく噴出したかのようで。
金持ち代表エノケン登場も貧乏芸人の希望の象徴として頗る良し。心に残る一作です。

No.1 6点 E-BANKER
(2015/04/06 21:14登録)
1996年発表の長編ミステリー。
十津川警部をはじめ作者のキャラクターが全く登場しない異色の作品。

~戦争の足音が忍び寄る昭和七年。エロ・グロ・ナンセンスが一世を風靡した浅草六区の劇場、偏奇館で三人の踊り子がつぎつぎに殺された。京子十八歳、早苗十九歳、節子十八歳。ひとりは川に浮かび、ひとりは乳房を切り裂かれ、ひとりは公園の茂みの中に・・・。事件の真相を尋ねて、私は五十年ぶりに浅草を訪れたのだが・・・~

作者らしくない筆致&プロット。
これまでトラベルミステリーや初期の本格或いは社会派ミステリーを何冊も読んできたが、いずれとも違う感覚・・・なのだ。
十津川警部や亀井刑事、左文字進のテンポ良い会話を中心に、高いリーダビリティで読ませる作品ではなく、止められない連続殺人事件を切々と描写する、何とも言えない哀愁感の漂う作品。

それもこれも事件の舞台設定のためだろう。
軍部が日本全体に徐々に侵食し、戦争に突き進んでいく暗い世相。
そんな中で唯一、民衆のための娯楽の街となった浅草六区。エノケンをはじめとして大衆娯楽の世界に力の限りを尽くす若者たち・・・
これが何とも言えない“哀愁感”を生んでいる。

本筋の殺人事件の謎自体はまぁたいしたことはない。
入れ子構造になって、過去の事件を振り返るというようなプロットの場合、普通ならもう少し「サプライズ的な仕掛け」があって然りなのだが、本作にはそこまでの仕掛けは込められてない。
でもいいのだ。
本作はそういう作品ではない。きっと作者は書きたかったのだろう。
この時代の浅草を。
確かに暗くつらい時代だったのかもしれないが、みんなが一生懸命生きていた時代・・・
たまにはノスタルジーに浸ってみるのもいいのではないか?
(当時からの店が今まだあるのが浅草のスゴイところ・・・)

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