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ミステリの祭典

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十四の嘘と真実

作家 ジェフリー・アーチャー
出版日2001年03月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 E-BANKER
(2016/01/09 12:57登録)
作者の十八番・・・といえばポリティカルスリラーとツイストの効いた短編集。
ということで、これまでも数作よんできましたが、十一や十五のつぎは“十四”を読了。
2000年発表。

①「専門家証人」=互いに無二の親友である検事と証人。しかも「専門家証人」(!)である。法廷劇も当然出来レースということになるのだろう・・・
②「終盤戦」=チェスになぞらえたタイトルで本作中最も長い一編。富豪となった男が最も自身のことを考えてくれている者を相続人とするのだが・・・というプロット。欲に目のくらんだ兄弟と欲のない○○、っていうようなこと。
④「犯罪は引き合う」=獄中であらゆる法律の条文を学習する男は、出所後ある犯罪に手を染める。しかも、条文を絶妙に利用した方法で・・・ということで犯罪は“引き合う”のか?
⑤「似て非なるもの」=これは皮肉の効いたなかなかの秀作。絵の才能があり母親が可愛くて仕方のない次男と、ただ只管真面目に生きてきた兄。順調に出世した兄に依存しつづけた弟に最後に強烈な一撃が打ち下ろされる!! (ざまあみろ!!)
⑥「心(臓)変わり」=南アフリカを舞台に白人と黒人の間の人種差別が巻き起こす一幕。
⑦「偶然が多すぎる」=これも実に作者らしい一編(これも実話らしいが)。愛に溺れた女性ってやっぱり目が曇っているということかな。まぁ男も一緒だけど・・・。詐欺師ってうまいよね。
⑨「挟み撃ち」=アイルランドとイギリス(アイルランド島北部ね)の国境にまたがって建つ家。家主はふたつの国の法律をうまく使って金儲けをしていたのだが・・・警察はそれに対して! さて!
⑩「忘れがたい週末」=結局この女性はこの男性が好きだったのか? 単なる当て馬だったのか? まあそっちだろうね。
⑪「欲の代償」=このラストは・・・救いがないねぇ・・・。詐欺にあうくらいなら笑い話の範囲内だが、こういう結末では笑えない。でも好きな一編。
⑭「隣の芝は・・・」=タイトルどおりで、要は他人を妬んではいけないという話。その人にはその人の本分があるということ。

以上14編。(4編は未書評)
さすがにこういう短編集を書かせたら旨い!
作品ごとのレベル差はあるけど、どれもツイスト感を効かせたいかにも短篇という作りになっている。
14編中9編は実話に基づくというのも興味深い。

人間の欲や罪というのは洋の東西を問わず同じということかな。
無難といえば無難だが、やはり水準以上の評価はできる。
(個人的な好みでいえば⑤>⑦>②あたりかな。)

No.1 5点
(2015/03/06 10:08登録)
実際の事件にもとづく9編と、そうではない5編とよりなる。
アーチャーのいつもの短編集のスタイルです。

「専門家証人」「犯罪は引き合う」。弁護士対証人、犯罪者対警部。こういった対決が「百万ドルを取り返せ」のように楽しく描いてある。これらも実話がヒントなのか。
ちょっと面白いのは、「心(臓)変り」。白人至上主義の男性の話です。まあ途中でオチを予想できますが。
「偶然が多すぎる」「ひと目惚れ」「挾み撃ち」など、さらっと読めて、しかも楽しい。

ラストのひねりに切れ味に乏しいものもあり(実はすっきりしないのものもある)、「15のわけあり小説」にくらべると、平均的にちょっと落ちる。
しかも、最後のオチで心温まるものは少なく、それを期待すると拍子抜けです。
遊び心、いたずら心ありの、陰でこっそり笑って楽しむような話がほとんどでした。

オチの出来不出来はともかくとして、アーチャーの短編は本書の収録作品を含めどれをとってもみなスマートな印象。
ひねりの利いたオチよりもむしろ、登場人物の粋さや、欲望絡みの話のわりにどろどろしたところがない点が、彼の短編小説の最大の特徴なのかもしれません。
一方、長編小説(サーガ、サスペンス)は、読みやすいので勘違いしそうですが、それなりに重みがあるものも多く、短編とうまく書き分けているという印象です。
こんどは久しぶりに長編を読んでみたいですね。

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