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ミステリの祭典

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約束の森

作家 沢木冬吾
出版日2012年03月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 猫サーカス
(2017/11/13 18:12登録)
人間不信に陥った警備犬という風変わりな設定。物語は、妻を殺人事件で亡くしたのち退職した元公安刑事・奥野のもとに、奇妙な依頼が舞い込む場面から始まる。マクナイトという名のドーベルマンを相棒にした奥野は、見知らぬ若い男女らと偽りの家族を演じ生活していく。前半、語られていくのは、奥野を中心とした疑似家族の日常。その中でマクナイトがかつて酷い虐待を受けていたこと、そして娘役のふみ、息子役の隼人という二人の暗い過去などが明かされる。やがてクライマックスに向け派手なアクションが炸裂する。ジャンルでいえば謀略活劇スリラーというべき長編ながら、家族を失ったり大きな傷を抱えたりした者たちの再生が大きなテーマとなっている。

No.1 5点 メルカトル
(2015/02/21 22:07登録)
妻を亡くした、元公安刑事が渋く、アクションは派手に活躍するハードボイルド。
主人公の元公安、奥野侑也はかつての上司から潜入捜査を依頼される。依頼の内容は海岸沿いのモウテルで、見知らぬ男女と三人で疑似家族を演じるという不可解なものだったが、のちにとんでもない災厄に見舞われることになる。
主役は奥野と、疑似家族を演じる若い男女の隼人とふみの三人だが、なんといっても目立つのが、警備犬(警察犬をレベルアップしたもの)になり損ねて、人間不信に陥っているドーベルマン、マクナイトだ。物語は、奥野とマクナイトの時に暖かく、時に泣ける交流を中心に進む。この元警備犬候補が周りの人間や、ふみが飼っているオウムのどんちゃんに、次第に心を開いていく過程は読んでいても心が和むが、肝心の謎の組織であるNや謎の人物スカベンジャーに関しての記述が、もやがかかっているような不透明感を感じる。はっきり言って分かりづらい。
帯には「一生手元に置いておきたい作品」と謳っているが、それは大げさすぎる。まずまずの出来だとは思うが、そこまでの傑作ではないだろう。誇大広告はやめていただきたい。

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