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ミステリの祭典

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七人目の陪審員

作家 フランシス・ディドロ
出版日2015年02月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 YMY
(2024/11/30 22:44登録)
主人公のグレゴワールは、街の薬局店主でどこにもいそうな平凡な人物である。ところが、ふとしたきっかけで若いローラを殺害してしまう。やがて粗暴な青年・アランが殺人犯として逮捕され、裁判にかけられることになる。彼が犯人でないことを知るグレゴワールは苦悩し、何度か自白しようとするが上手くいかない。そうするうちに、グレゴワールはその裁判の陪審員に選任されかける。
主人公の意識を追う形式で綴られ、グレゴワールはアランが極刑に処されるのを回避しようと必死に手を尽くす。だがその試行錯誤はなかなか実らず、その右往左往ぶりが実に楽しい。状況はシリアスで緊迫感すらあるが、ユーモアは否定しようもない。そしてラストには、ある意味強烈で皮肉な結末が待ち構えている。

No.1 7点 kanamori
(2015/03/02 22:27登録)
薬局の店主グレゴワールは、河べりを散歩中に水浴びをする娘ローラに出くわし、悲鳴をあげられた混乱のなか彼女を殺めてしまう。しかし嫌疑は彼に及ばず、ローラの愛人アランが犯人として逮捕される。グレゴワールはアランの冤罪を雪ごうと策を弄するうちに、事件の陪審員に選任されてしまう---------。

冤罪を扱った法廷ミステリ、とはいっても重厚さやシリアスな感じはあまりなく、軽い語りでブラック・ユーモアもある、いかにもフランス・ミステリらしい作品。(ただ、最後まで読むと、その印象がだいぶ変ってくるのですが)。
夢想家ぎみの中年男グレゴワールという人物の揺れ動く内面描写が終始興味深く、自首はしたくないが無実の青年は救いたいため、あの手この手と策を弄するも、皮肉な展開の連続に翻弄される。このあたりフランス版「試行錯誤」という評も肯ける。
一方で、誰もが顔見知りで噂がすぐに広まってしまう小さな町という舞台背景が重要な要素になっていて、それがバークリー作品とはテイストが異なる、風刺的で不条理な本作の結末に結びついているように思います。

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