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ミステリの祭典

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判決破棄
リンカーン弁護士

作家 マイクル・コナリー
出版日2014年11月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 8点 Tetchy
(2019/04/20 23:01登録)
前作がボッシュとの共演だったら、なんと本書ではそれに加えて彼の元妻マギー・マクファーソンとも共同で仕事をする。
更になんと今回ハラーは弁護士でなく特別検察官として雇われ、DNA鑑定によって判決破棄された24年前の犯罪で逮捕された少女殺害犯の有罪を勝ち取るためにマギーを補佐官、ボッシュを調査員として雇い、チームとして戦うのだ。
しかもそれぞれの関係が元夫婦、異母兄弟とそれぞれ微妙な繋がりがある奇妙な混成チームであるところが面白い。
しかし彼らに共通するのは年頃の娘を持つ親であること。ミッキーとマギーは2人の間に生まれたヘイリーがおり、ボッシュは前作『ナイン・ドラゴンズ』で一緒に暮らすようになったマデリンがいる。彼らのこの同族意識が勝ち目のないとされる少女殺害犯の有罪判決への道を歩ませたと云える。

しかしよくもまあこれほど面白い設定と行動原理を考え付くものである。全くいつもながらコナリーの発想の妙には驚かされる。

しかもこのチーム、実にチームワークがいいのだ。
ボッシュはそれまで培った刑事の勘を存分に発揮し、24年前の事件関係者を次々と捜し出す。
マギーは女性ながらの心遣いとベテラン検事のスキルで以ってミッキーをサポートし、ミッキーもまた百戦錬磨の弁護士生活で培ったノウハウを検察側に持ち込み、裁判を有利に持ち込むことに腐心する。
お互い我の強い性格でイニシアチブを取るのが通常の3人であったので、自分の主張を通すことに執着し、常に意見が割れて反発ばかりするかと思いきや、実にバランスよく裁判の準備が進んでいく。
この過程は読んでいて実に面白かった。

ただ悪が成敗されたのにこれほど爽快感がない物語も珍しい。コナリーはアメリカ法曹界が孕む歪みを巧みに扱って我々読者を牽引しながら、最後は渇いた地表へと導いた。

しかしそれでも本書は清々しい。それは子を持つ親たちがそれぞれの立場で最大限に尽力し、真摯に悪に立ち向かった物語だったからだ。

父親と母親は子を護るためなら必死になる。子供たちの知らないところで親たちはこんな戦いをしているのだ。同じ娘を持つ親であるコナリーはもしかしたら自分の娘にこの話を届けたかったのかもしれない。

No.1 6点 kanamori
(2015/01/18 14:49登録)
刑事弁護士ミッキー・ハラーはロサンジェルス地区検事長から意外な要請を受ける。それは24年前の少女殺害事件に対して出された有罪判決破棄による差し戻し裁判の特別検察官に就任してほしいという要請だった。ハラーはロス市警のハリー・ボッシュを検察調査員に選び、勝算皆無の再審法廷戦に挑むが---------。

リンカーン弁護士シリーズの第3弾。今回コナリーが仕掛けた趣向は、弁護士と刑事という本来対立する立場のハラーとボッシュの異母兄弟を同じサイドに立たせ、タッグを組ませること。おまけにハラーの元妻で検事補のマギーがハラーの補佐官になる。
慣れない検察側での法廷劇はハラーが主役、法廷外の証拠集めと保釈中のジェサップ被告の監視がボッシュというダブル主人公で、二人の視点が章ごとに交互に入れ替わりながら、ストーリーは意外な方向に展開していく。この辺はいつもながら巧いと思うが、ラストの処理にはモヤモヤ感が残った。
ボッシュはペリー・メイスン物の探偵ポール・ドレイクのような役回りながら”見せ場”も多く、娘のマデリンとの関係では違う一面を見せていてファンなら楽しめる。ただ、シリーズ通読者以外の人が読んでも、同等に楽しめるかと聞かれると、いささか答えに躊躇してしまう面もありますね。

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