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ミステリの祭典

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モーニングショー殺人事件

作家 大谷羊太郎
出版日1977年09月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2021/08/14 14:59登録)
(ネタバレなしです) 初期作品である1972年発表の本格派推理小説です。芸能人の古い知人や友人を捜し出して芸能人と再会させるテレビ番組でゲスト出演の女性が毒入りジュースを飲んで死亡し、別室で待機していた夫も同じく毒死する事件が起きます。他殺の疑いが濃くなりますが本人以外には毒をジュースに混入させることは不可能という風変わりな密室事件が成立します。この作者らしく犯人当てにはあまりこだわらずトリックの謎解きをメインにしたプロットですが第3章では生前の被害者夫婦が脅迫者になっている場面を挿入したり、第10章では殺人犯を声だけ登場させたり、最終章では「逮捕された犯人が安らぎを浮かべ刑事の方は渋いつら」と演出に工夫を凝らしており、作家としての余裕が出てきたのでしょう。文章も無駄なくすっきりしていて読みやすいです。

No.1 5点
(2014/11/26 22:22登録)
タイトルどおり、生中継のモーニングショーで殺人が起こるという事件です。
大谷羊太郎らしくハウダニットが中心、というより他の謎解き要素をほとんど切り捨てた作品です。途中に犯人が動機を電話で語っているシーンがあるのですが、そこでは犯人の名前は隠されているにもかかわらず、あまりに明白で、犯人の意外性を作者が全く度外視していることは明らかです。ただ、動機のある部分だけは最終章で初めて明らかにされ、それはあまりミステリ的とは言えないかもしれませんが、悪くないと思いました。しかしその動機で読者を感心させることができる小説構成ではありません。
焦点になる毒殺トリックはかなり地味ですが、なかなか念入りに考えられています。また途中で起きる密室殺人のトリックは意外性はさほどありませんが、現実的と言えるでしょう。ただ、他にも方法はありそうですが。

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