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ミステリの祭典

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闇に香る嘘

作家 下村敦史
出版日2014年08月
平均点7.09点
書評数23人

No.3 8点
(2015/01/13 10:51登録)
感動感涙の社会派本格ミステリー。

満州から無事に帰国できたがその後、全盲となった主人公と、満州で生き別れその後、中国残留孤児として帰国した兄。
この二人の関係が明かされる序盤だけで、戦争を背景とした壮大なミステリーを期待した。
中盤は盲人視点によるサスペンスがあるわりに退屈な感があったが、終盤で大逆転。

終盤の疾風怒濤の展開と、驚愕の真相開示には息を呑んだ。乱歩賞選者や評論家に大絶賛された意味がよくわかった。過去の受賞作とくらべてどうのこうのではなく、これほど強烈な作品なら当然のことだろう。
人間ドラマであるという評も聞かれるが、それにもちがいなし。いや大河小説といってもいいのではないか。

もちろんミステリーとしても申し分なし。選評にもあるが、数ある伏線とその回収はお見事。
盲人の視点だから、仕掛けは叙述トリックともいえる。前述したが、サスペンスにも大いに寄与している。
アイデア勝ちではあるが、決してそれだけではないと感じた。

難癖をつけるとすれば、私、村上和久が兄を疑う経緯が安直すぎるところだろうか。ドナー検査の拒絶を兄を疑うきっかけとすることはいいとしても、人間ドラマなら、そこを起点として、もうすこし葛藤が描かれていてもいいのではないか。
とはいえこれは前半での微細な疑問点。絶賛評価に影響はない。
謎が解けてしまえば、エピローグは予想し得るものかもしれない。でも、そんなことはどうでもよく、この後味のよいエピローグにも拍手を送りたい。

(以下の文章、もしかしたら真相を示唆しているといえるかも)
近時、日本人を元気づける意味で、「こんなところに日本人」みたいな番組が多くテレビ放映されているが、この小説も一役買えるのではないだろうか。しかも中国人にも喜ばれそう。

No.2 7点 kanamori
(2014/12/06 23:19登録)
人工透析を受けている孫娘のために、「私」村上和久は中国残留孤児だった兄・竜彦に腎臓移植のドナー検査を依頼するも、何故か拒絶される。和久は”兄”が血縁のない偽者ではないかと疑い、真相を突き止めようとするが---------。

第60回江戸川乱歩賞受賞作品。各選考委員絶賛で、今週の週刊文春ミステリーベスト10総括でも、千街晶之氏が「乱歩賞六十年の歴史に残るであろう傑作」と最上級の評価をしていたので期待して読んだ。
「私」は、戦時下満州の劣悪環境が原因で41歳のときに失明している。つまり、盲目の主人公による一人称視点という困難な設定に挑戦している点が素晴らしい。
当然ながら情景描写はなく、触覚、聴覚、臭覚で得た情報だけで謎解きが展開されるのだけど、この設定がミステリの仕掛けの部分に巧く活かされ、終盤の驚愕の反転図につながっています。中盤までは、戦時中の満洲でのエピソードや視覚障碍者の実情が事細かく語られ”じれったい”展開ですが、それらのなかに張られた伏線が最後にきれいに回収され、まさに人間ドラマと謎解きが見事に融合していると思います。
なおネットの感想などで、ロバート・ゴダードの「闇に浮かぶ絵」からのパクリ疑惑を見受けますが、”正統を名乗る二人”の真贋テーマは昔からある題材(=たとえば、カーの「曲がった蝶番」)ですし、プロットも作風も全く異なっていると思います。

No.1 9点 HORNET
(2014/11/09 10:38登録)
 69歳の全盲の視覚障碍者が、中国残留孤児であった兄に孫の腎臓移植の適正検査を頼んだところ、それを拒んだことから「兄は偽者ではないか?」と疑い、独自に調べていくストーリー。「私こそが本物の兄だ」と名乗る中国籍の男も現れ、「どちらが本物なのか?」という意識で読み進めてしまう中、最後の着地点は見事。主人公が調べていく中で要所にちりばめられる伏線も、納得のいく回収の仕方で全て真相につながっており、その手腕には感服する。
 全盲になったことから娘との絆が壊れてしまった主人公が、孫娘の腎臓移植に道筋をつけることで何とか娘との絆を取り戻そうとする複線も、物語にヒューマンドラマ要素を付加していて非常に効果的。最後の結末は、誰もが心を温かくして終えることができ、読後感も◎。
 江戸川乱歩賞受賞作家の今後の活躍に期待したい。

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