home

ミステリの祭典

login
闇に香る嘘

作家 下村敦史
出版日2014年08月
平均点7.10点
書評数21人

No.1 9点 HORNET
(2014/11/09 10:38登録)
 69歳の全盲の視覚障碍者が、中国残留孤児であった兄に孫の腎臓移植の適正検査を頼んだところ、それを拒んだことから「兄は偽者ではないか?」と疑い、独自に調べていくストーリー。「私こそが本物の兄だ」と名乗る中国籍の男も現れ、「どちらが本物なのか?」という意識で読み進めてしまう中、最後の着地点は見事。主人公が調べていく中で要所にちりばめられる伏線も、納得のいく回収の仕方で全て真相につながっており、その手腕には感服する。
 全盲になったことから娘との絆が壊れてしまった主人公が、孫娘の腎臓移植に道筋をつけることで何とか娘との絆を取り戻そうとする複線も、物語にヒューマンドラマ要素を付加していて非常に効果的。最後の結末は、誰もが心を温かくして終えることができ、読後感も◎。
 江戸川乱歩賞受賞作家の今後の活躍に期待したい。

21中の書評を表示しています 21 - 21