深き森は悪魔のにおい チャーリー・モルデカイ/改題『チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔』 |
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作家 | キリル・ボンフィリオリ |
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出版日 | 1981年05月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | 雪 | |
(2021/02/27 04:42登録) しばらくの間ロンドンから離れ、妻ジョハナや用心棒ジョックとともにイギリス王室属領のジャージー島に移り住むことになったチャーリー・モルデカイ。だが平和な税金天国での暮らしは一変し、連続レイプ魔事件が発生する。かつて島中を震撼させた〈ジャージー島の野獣〉事件を思わせる手口と、犯人が残していった手掛かりから悪魔崇拝が関係しているのではとにらんだモルデカイは、対抗手段をとるべく奮闘する。しかし事態は思わぬ展開を迎え、さらなるピンチに!? 男爵家の次男坊で、犯罪スレスレの絵画商を営む「いやらしくて、おこりんぼの男」、チャーリー・モルデカイが活躍するシリーズ第三弾。1976年発表。学生時代に古本屋で買い逃したっきり入手の機会もなく半分諦めかけていた所、どうトチ狂ったか当時売れっ子のジョニー・デップ主演で唐突に映画化。それに伴いシリーズ四作全てが新訳出版されました。本当にこんなもの出していいんですかね。 サンリオSF版は例によって訳の分からない表紙に、例によって野口幸夫のイミフ解説で全く内容が掴めませんが、いざ三角和代の角川文庫版を読むと開けてビックリ玉手箱、九割以上が本筋とは縁も所縁も無い展開のまま、あさっての方向へ一直線。巧みに伏線が鏤められているとかそういう事もなく、いっそ潔いくらいなもの。ラスト30ページは悪夢のような出来事の釣瓶打ちで纏めてますが、たぶん直前まで何も考えてないと思います。〈作者が正気に戻ったかのように急転直下で終わる〉との他サイト評は、まことに適切と申せましょう。 しょうがないのでモルデカイの駄法螺とブラックジョークに身を任せながら、ピーター・ディキンスン同様全くミステリとして期待せずに読んでいくと、イギリス教養人特有のひねくれまくった底意地悪さが炸裂してて、これがなかなか面白い。モンティ・パイソンとかが楽しめる人は買いでしょう。逆に合わない人は徹底的に合わないでしょうね。とりあえず評者はグルメ小説として堪能しました。 怪作というより珍作とした方が適切な本書ですが、強引極まりないオチにも関わらず、読後にそこはかとない哀愁が漂うのが困りもの。どうしようもなくおマヌケな主人公だけど、多分シリーズ通してこういうキャラなんだろうなあ。嫌いじゃないけど7点付ける勇気は流石に無いんで、まあ無難に6点。 追記:2015年公開のデビッド・コープ監督作品『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』は、興行収入4730万ドルに対し推定制作費は6000万ドル、回収率79%とものの見事に大コケし、チャーリーを演じたジョニー・デップは2015年度初の〈ハリウッドギャラもらいすぎ俳優第1位〉に選出されました。 公開時には "興行的災厄" とも囁かれ、主演のジョニデは今でもこの映画の事を聞かれると凄く嫌な顔をするそうです。まあそうだよね。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2014/10/24 22:05登録) ジャージー島で妻ジョアンナと暮らす「ぼく」チャーリー・モルデカイの家の近隣で、連続して女性がレイプされる事件が起きる。夫人がともに被害に遭った二人の友人、ジョージとサムとともに、モルデカイは謎の強姦魔探しに乗り出すが--------。 男爵家の次男で怪しげな美術商を営む、”閣下”ことチャーリー・モルデカイを主人公とするシリーズの一冊。 あらすじ紹介だとサイコサスペンス風ですが、モルデカイの語りが猥雑・下品かつブラックなジョークまみれで、終盤まではサスペンス性は全くといっていいほどありません。ジャンルでいうと、パロディ&ユーモア小説であり、グルメと酒の薀蓄が溢れる教養小説でもあり、また悪魔狩りテーマのホラー小説風なところもあり、なんと最後は謎解きミステリになっています。サンリオSF文庫なのにSF要素だけはありませんがw ぶっちゃけ、横道に逸れるパートが多いのが非常に鬱陶しく、どちらかというとトンデモ本なんですが、最終章の急転直下な意外な展開を評価してこの点数にしておきます。 なお、このシリーズはジョニー・デップ主演で映画化され、来春には日本でも公開される予定とのことです。 |