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ミステリの祭典

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大道将棋殺人事件

作家 山村正夫
出版日1985年09月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2022/12/08 23:31登録)
(ネタバレなしです) 6つの本格派推理小説の短編を収めた1985年発表の本書はタイトルに「将棋」が使われていることから女流棋士の小柳カオリシリーズかと思う読者もいるかもしれませんが彼女は全く登場しません。主人公はプロ棋士を目指すも師匠との関係が悪化して大道将棋士に転向した風早仙吉です。「鬼殺しの仙吉」と棋界で噂されていると紹介されていますが、それほどエキセントリックな人物像ではありません。どの作品にも詰将棋の問題と正解が載っており、将棋の得意な読者ならこれだけでも十分に楽しめるかもしれません。あいにく駒の動かし方を知ってるだけの私には二十一手詰めとか二十七手詰めとかになると考える気にもなりませんでしたが。個人的に印象に残ったのは密室の中の2つの死体と消えた凶器の謎解きの「国東心中」と、仙吉が出会った掏摸の被害者が3ヶ月前に死亡していたらしい謎解きの「陸中双玉殺人」です。

No.1 6点 kanamori
(2016/01/14 18:02登録)
大道将棋を生業とする”詰め将棋屋”の風早仙吉が、放浪先の地方で出くわした数々の事件の謎を解いていく連作本格ミステリ。

プロ棋士としての将来を嘱望されながらも、奇策・ハメ手を得意とする棋風を嫌われ、師匠のもとを飛び出してテキ屋稼業に身を持ち崩したアウトローの主人公というのが、本格ミステリの探偵役としては非常にユニークで、魅力的です。ノワールな雰囲気があるところは、ちょっとだけ木枯し紋次郎を思わせますね。
これで、本格ミステリの部分も秀でていれば文句はないのですが、いずれも使い古された古典的なトリックが多用されていて、総体的にトリックに斬新さが見られないのが残念なところです。
そんななかで印象に残ったのは、寺のお堂での偽装無理心中を扱った「国東心中」。密室状況の心中なのに凶器が見当たらないという設定が、某国内古典名作を連想させるじゃないですか。
謎解きミステリとしては5点相当ですが、物語の雰囲気が好みなのでこの評価にしておきます。

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