柩の中の狂騒 改題『柩の中に生者はいらない』 |
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作家 | 菅原和也 |
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出版日 | 2014年08月 |
平均点 | 4.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 4点 | 名探偵ジャパン | |
(2019/05/16 11:53登録) 普通じゃない人が建てた、普通じゃない館がある絶海、とも言えない程度(携帯の電波が入る)の孤島に集った、いわくつきの人たち。 それはもう、お約束のように登場人物のひとりが死体で発見されて…… とまあ、そこまでは良かった(?)のですが、第一の死体発見以降、事件は悪い意味で予想外の舵を切ります。悪い意味というのは、いわゆる「ガチガチの孤島ミステリ」を期待していた読者にとってです。 謎も神秘もないバイオレンス&スプラッターなドタバタ劇を経て、最後は、みんなそう思っていたよ、というバレバレな推理結果に落ち着いて一件落着かと思ったら、今風のミステリっぽく再度反転などを見せてきます。 作者は昨今のミステリをよく研究したうえで、自分の得意種目との融合を目指したようですが、成功しているかは微妙なところです。 |
No.1 | 5点 | E-BANKER | |
(2018/03/08 17:55登録) 第三十二回横溝正史ミステリ大賞を「ゴミよ、言葉なんて」(単行本化に当たり「さあ、地獄へ堕ちよう」へ改題)にて受賞。 1988年生まれ。バーテンダー、クラブのボーイなど異色の経歴を持つ・・・とのことで、作者の初読み。 (手に取ったのは単なる偶然ですが・・・) 文庫化に当たって「柩の中に生者はいらない」へ改題されたものを今回読了。2014年の発表。 ~『悪魔』の透明標本を作り学会から追放されたと噂される根室正志。その根室の最後の作品が完成し、披露されることになった。人づてに聞きつけ集まったのは一見結び付きのない八人の参加者。猟奇事件を追うフリーライター、遺産で生活する美人写真家、推理作家など・・・。彼らは福島県の沖合の孤島に向かうも、予想外の事件が待ち受けていた。島での一夜を余儀なくされた男女にさまざまな思惑が渦巻く。そして第一の殺人事件が・・・~ ということで、外界から隔絶された「孤島」に浮かぶ妙な造形の「館」である。 集められたいかにも秘密有りげなメンバーたち、招待主も一癖も二癖もありそうな芸術家(科学者?) そして唐突に発生する殺人事件。しかも死体の首だけが発見される猟奇的殺人。 当然のように第二、第三の事件が・・・ なにを今さら、こんな設定持ち出しやがって! って思うよね。自分自身で作品のハードルを上げているとしか思えない暴挙! で、うまくできているかというと、これが微妙なのである。 ネタバレになりそうなのであまり書けないけど、少なくとも“正統派の”本格ミステリーでは決してない。 もともとがホラー寄りの作者らしいけど、そこまで「ホラー」に振り切っているわけでもない。 「本格」と「ホラー」のハイブリッド、いいとこ取りを狙った作品なのだろう。 数多のミステリー作家が掘り尽くした「絶海の孤島」という鉱脈を最後にひとすくいしてやろうとした、とでも表現すればいいのか。 しかし、そこに「金」は殆どなく、あったのは僅かばかりの「砂金」だったということかな。(分かりにくい?) 常識的な解決が付けられたと思われた矢先に仕掛けられた作者の毒(っていうか仕掛け)。 これも「毒」の量が少なくて、あまり痺れなかった。 まぁチャレンジスピリッツは買うけどね。作風ほど作者はとんがってなくて、やや予定調和というか読者の顔色を伺ってる感が鼻に付くのが惜しい。 |