ダンデライオン 鏑木特捜班シリーズ |
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作家 | 河合莞爾 |
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出版日 | 2014年10月 |
平均点 | 6.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | メルカトル | |
(2023/10/08 22:17登録) 東京の山間部、タンポポの咲き誇る廃牧場のサイロで、空中で刺殺されたとしか思えない異様な死体が発見された。被害者は16年前に行方不明になった女子大生・日向咲。捜査第一課の警部補・鏑木鉄生は、部下・姫野広海の口から「空を飛ぶ娘」という昔話の存在を知る。翌週、今度は都心の高層ホテル屋上で殺人事件が発生。だが犯人は空を飛んで逃げたかのように姿を消していた。やがて二つの事件の接点として、咲が大学時代に所属していた「タンポポの会」というサークルが浮上する―。 『BOOK』データベースより。 目茶苦茶読みやすく面白かったですね。これぞストレスフリーの読書って感じでした。それにしても、この作者はやはり島荘を標榜しているのでしょうか。何から何までそっくりです。 文庫本の帯にある解説者の大矢博子の「ミステリとして1ミリの無駄もない」という惹句はまさにその通りで、無駄な描写が全くありません。ただ、特に第一の殺人には図解が欲しかったところですね。まあこれは私の勝手な言い分なので言っても詮無い事だとは分かっていますけど。あと、解説は先に読まない方が賢明だと思います。 空を飛べる人という壮大な与太話を、真剣にいい大人が語っているのは可笑しいですが、そのあり得ない状況、つまり広義での密室をトリックと言うより人情物の様な語りで補完している点はまあ良しとしましょう。そこには作者も重きを置いていないのだと思います。それよりもその後に襲い来る衝撃の方が何倍も驚かされますよ。気持ちよく騙されました、完敗です。 デビュー作はそれ程でもなかったので、遠ざかっていました。しかし、今回長年積読しておいた本作を手に取ってみる気になったのは、幸運と言うべきか、遅すぎたと言うべきか・・・でも期待以上の出来に満足はしています。もっと世間に知られていい作品でありシリーズじゃないでしょうかね。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2014/11/18 19:10登録) 東京郊外の廃牧場にあるサイロでミイラ化した女性死体が見つかる。密閉されたサイロ内のその死体は、あたかも空中浮遊中に鉄パイプで串刺しされた状態。しかも被害者は、姫野刑事が幼いころ同じアパートに住み、「空を飛ぶ娘」の民話を語って遊んでくれた女子大生・日向咲(えみ)だった-------。 警視庁の鏑木警部補率いる特捜班4人が活躍するシリーズの3作目。 サイロ密室の浮遊死体に続いて、高層ホテルの施錠された屋上の焼死体と、今回も不可思議な事件を担当しますが、若い姫野刑事の過去や、左翼組織グループが関係することで公安警察が絡むという、やや複雑なプロットになっています。 現在の捜査状況の合間に、双子の女性の片割れ・日向咲の16年前のエピソードが挿入される構成が効果的で、事件の隠された構図を徐々に明らかにしていくとともに、巧妙なミスディレクションになっています。「双子」ということで当然いだくアノ疑いの斜め上をいく真相には見事に騙されました。アンフェアぎりぎりの描写もありますが、貧困家庭という事実で、そういう作為もあり得るかなと思います。トリックのためのトリックにならず、きっちりと人間ドラマに寄与している点を評価したいです。 しかし、たんぽぽ(ダンデライオン)の花言葉のひとつが「解き難い謎」とは......。 |