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ミステリの祭典

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マーメイド
弁護士トム・アラゴン

作家 マーガレット・ミラー
出版日1993年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点
(2018/06/10 05:32登録)
 アラゴン弁護士シリーズ3作目にして最終作。結構行動はするのですが、今回もたいして役に立ってません。というかある意味アラゴンのうっかりがなければこうはなってないですね。本人も「ぼくの責任です」って泣いちゃってますけど。人命救助とか彼なりに頑張ってるんですが。
 ストーリーの骨子はある知恵遅れの少女が無自覚に誘発していく事件や犯罪と、その結末を描いた小説です。ほぼ普通小説と言ってもいい。
 この少女、アラゴンと面会する冒頭のシーンではそれなりに可憐なのですが、必ずしも純真無垢な存在でない事はすぐに読者に分かってきます。
 だが悪意皆無といえど自分の行為に一切責任が持てないだけにいっそうタチが悪い。彼女に振り回されて多くの登場人物が傷を負っていきます。最後には彼女自身も無自覚に手を血に染める事に。
ラストの救いの無さはミラー作品でも屈指でしょう。題材が題材なのでどうしようもないですけど。
 最後まで善意を失わない障害児施設の学園長先生の存在だけが救いです。彼女も結局は事件の責を負わざるを得なくなるのですが。

No.1 5点 蟷螂の斧
(2014/08/31 17:59登録)
弁護士トム・アラゴンシリーズの3作目。裏表紙より~『娘の名はクリーオウ、自称22歳。とある風の強い午後、スメドラー法律事務所を訪れた被女は、謎めいた台詞を残して帰途についた。そして数日後、ひとつの報せがもたらされる。娘が失踪した、という。捜索に駆り出されたアラゴンだったが、澱んだ池に投じられたこの一石は、人々のあいだに意外な波紋を描き出していく…。心に弱点を負った男女の軌跡を辿る、異色のサスペンス。』~                                               ミステリー度、サスペンス度は低く、一般小説に近い。目次は、①少女②女③人魚となっており、パーソナリティ障害を持つ少女の精神的変化の過程、行動を描いたものです。アメリカでのマーメイドの意味は破壊へ導くものということでいいのか?(ドイツのローレライ伝説は、確か船乗りを惑わすだった)ラストはそれに近いものでした。著者60代後半の作品で、アメリカ社会を風刺するような意図があったのかもしれません。

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